日本現代詩人会とは

ごあいさつ


【会長就任にあたって―2023年】会長 郷原 宏


  このたび思いがけなく会長に就任することになりました。静かに余生を過ごしたいと思っていた身にとって、まことに難儀な大役ですが、お引き受けした以上は、老骨に鞭打って精一杯がんばるつもりです。どうぞよろしくお願いいたします。
 現代詩は、このところ少し元気がないように感じられます。短歌や俳句は、ちょっとしたブームになっていて、関連書がよく売れているようですが、詩集がベストセラーになったという話を聞きません。原因はいろいろあるでしょうが、詩人たちが内向きになって、外部に知己を求めなくなったことも大きな理由のひとつだろうと思います。
 俗悪な資本主義市場経済に背を向けて、ひとり孤高の道をゆくというヒロイズムは、私も嫌いなほうではありませんが、冷静に考えてみれば、やはり独善的な痩せ我慢にすぎないという謗りを免れないでょう。
 そこで私は他ジャンルとの交流をもっと活発にしたいと考えています。詩と絵画、詩と音楽とのコラボレーションは、これまでにも行われてきましたが、それをもっと拡大して、たとえば漫画、アニメ、ポップス、ミステリー、哲学、民俗学などとの協働はできないものか、新しい理事のみなさんといっしょに考えてみたいと思います。
 将棋界に藤井聡太、囲碁界に仲邑菫という天才が登場して、斯界は一挙に活性化しました。我が現代詩壇にもと願わずにはいられません。天才は作るものではなく生まれるものだといいますが、それならせめて天才の生まれやすい土壌を作っておくのも、私たちのつとめだろうと思います。現代詩の明日のために、共にがんばりましょう。

再びの活気を 理事長 塚本敏雄

 この度の役員改選で理事長という大任を仰せつかりました塚本敏雄と申します。
日本現代詩人会という伝統も実績もある大きな団体の、要となるべき役職ですので、わたしのような者で良いのかという思いはもちろんありますが、会員の皆様が活気ある交流を出来ますよう、微力ながら力を尽くしたいと存じます。
 わたしは二〇一七年度から二〇二〇年度まで、本会理事会に入れて頂き、会計という立場で日本現代詩人会の運営に係わらせて頂きました。この度は、新会長・郷原宏氏のサポート役として、この度の大任を務めて参りたいと存じます。これまで理事長を務めて頂いた皆様は経験も実力も十分に備えた方々ですが、わたしの場合は、そのような力もありませんので、汗かき役として少しでも皆様のお力になれればという思いで取り組んでいきたいと考えております。
 新型コロナウィウルスは二〇二〇年から猛威を振るい、ちょうど日本現代詩人会が計画していた七十周年記念事業をほぼ完全になぎ払ってしまいました。このことは口惜しいと言う一語尽きる痛恨事であります。まだまだ予断は許さない状況もございますが、これからは次第に、様々な活動が出来る状況に戻っていくと思いますので、どのようにすれば日本現代詩人会として、有意義な活動ができるかを考えて参りたいと思います。

たくさんの風穴 杉本真維子

 このたびは、理事選挙で思いがけず多数の投票をいただき、感謝いたします。比較的若い世代の一人として、微力ながら会長と理事長のおてつだいをしたいと思います。前任は2013年から東日本ゼミナール、2021年から国際交流を担当しました。国際交流では今年の3月に「日本と台湾の詩のいま」というイベントを企画し、おふたりの台湾詩人にそれぞれ講演と朗読をビデオレターでお願いしました。
 さて、これは春に共同通信の詩の月評でも書いたことなのですが、かつて仙台の尾花仙朔さんに「H氏賞だけは詩を書く人がいる限り無くならないから」というお言葉で賞への応募をすすめていただいたことが私はあります。多くの詩集賞がほんとうに姿を消した今、この言葉がいっそう重みをもって迫ってくるのを感じます。
 そんな状況の一方で、若い世代の詩は活況を呈しているように思えます。たとえば、現在、早稲田大、慶応大など様々な大学で教壇に立つ詩人たちが連携して立ち上げた「インカレポエトリ」という結社(雑誌)があり、そこを母体に優れた詩集が続々と刊行されています。当会においては、第2回現代詩投稿欄新人賞を受賞された橘麻巳子さんがこのほど優れた第2詩集を刊行され、着実に詩のあゆみを進めていらっしゃいます。
 一筋縄ではいかない状況のなかで、当会に求められていることの一つは、いかに自らにたくさんの風穴をあけるか、ということかもしれません。詩人団体がもつ詩集賞のつよみとかがやきを守っていくことも、詩の豊かな未来のために、たいせつな仕事と考えています。そのためのお力をお貸しいただけたら幸いです。どうぞよろしくお願い申し上げます。




【ごあいさつ2021年】

再び「うたげと孤心」 会長:八木幹夫

  2021年度日本現代詩人会会長に就任した八木幹夫です。コロナ禍のために世界中がグローバルな暗雲に閉ざされています。文学は、殊に詩は人々の精神を解放するうたげの中心にあるものです。かつて本詩人会の会長を二度にわたって務められた大岡信さんは日本文学の底流に流れる「うたげと孤心」を抽出し、日本の詩歌伝統の再発見を試みました。
 ここでいう「うたげ」とは酒を飲み食いし、どんちゃん騒ぎをすることではありません。詞華集の編纂、歌合わせ、連歌等、詩歌の創造の場としての「うたげ」。それに創作者の「孤心」を対峙させる。創作者の孤心なくしてうたげもなく、うたげなくして創造的な個人の創作もないと言えましょう。私たちは今、個々の生活の中に封じ込められているように見えます。孤心を涵養する時期なのかもしれません。大岡さんの言明したことは充分現在にも通じることです。
今回、縁あって理事の皆さんと共に本会を運営していくことになりました。会員の皆さんが詩作品を通して深く沈潜し、うたげの場(意見交換が活発にできる場)でより良い創作活動が可能になるようにしたいと思います。またできる限り、理事会でも若い詩人たちの情熱を取り込み、斬新な考え方を活かしていきたい。
 言葉には不思議な力があります。地方で埋もれている言葉もひとたび詩の翼を持てば決して無力ではありません。 詩の言葉は未知のものに立ち向かう鋭い刃のようなものです。先人の築いた文化的な伝統を受け継ぎ、さらに新しいことに挑戦する日本現代詩人会に会員の皆さんのお力を借りたいと思います。
2021年9月16日

多彩な詩人が活躍する会に 理事長:佐川亜紀

 理事選挙で、思いがけず、会員の皆様から多くのご投票を頂き深謝いたします。2021年度第2回理事会においてご推薦を受け、理事長を務めさせて頂くことになりました。歴代理事長の多大な業績をかえりみ、自らの非力さに不安を抱きますが、どうぞよろしくご支援のほどお願い申し上げます。女性の会員は創立時と比べ大幅にふえ、活躍されていますが、会長・理事長になられる方はまだ少なく、日本社会と同じ現状を変えてゆきたいとのご意向を感じます。
 八木幹夫会長、田村雅之副理事長は豊かな詩の実績をお持ちで、今回、お二人のご指導のもと、山田隆昭前理事長にもお教え頂きながら、優れた理事の皆様と働けることは幸運です。諸先達には遠く及びませんが、多彩な詩人が自由な表現で刺激し合う活発な交流の場を目指したいです。
 前任は、HP担当として、微力ながら発信に努め、HP運営委員会のご協力を得て英語版を開設し、国際交流に弾みがつきました。投稿欄も選者の方々の真摯な熱意により充実し、投稿される方も増加し、ありがたいです。秋亜綺羅HP・IT担当理事は元理事長で、情報技術に詳しく、一層注目を集められることでしょう。 前期は、70周年記念事業がコロナ禍で中止となり、大変残念です。地域記念イベントの実現に向けてご尽力された方々に厚く御礼申し上げます。会員の皆様おひとりおひとり、各地各詩誌の詩活動が本会を、詩の世界を創り支えて下さっています。ご努力をさらに反映させ活かせるようにしてゆきたいです。皆様のご協力をお願い申し上げます。

副理事長就任のご挨拶 副理事長:田村雅之

 このたび、本会の副理事長の役を仰せつかった田村雅之です。前期(二〇一九~二〇二〇年)に継いでの御役目となりますが、どうぞ宜しくお願い申し上げます。
 昨年、一昨年と新型コロナ・ウイルスの感染拡大禍にあって、日本現代詩人会が執り行う予定で準備していた多くの行事が、みな延期・中止のやむなきに至りました。
 詩祭はもとより、新年会や地方の大会、各地での七〇周年記念地方事業のイベントなどが、取りやめと相成りました。詩人たちと語り合う場が失われ、交流できなかった事態はこれまで経験したことのなかったことで、たいへ ん寂しい思いを会員の多くが味わったことだと思います。

 Any where out of the world.
  この世の外ならば、
      どこでもいいのだ。

 ボードレールではありませんが、叫んでみたくなります。叫んで抛り投げたくなるような現(うつつ)であります。
 我慢をして、今期こそいつも通りに、多くの行事が無事に開催され、詩作のエネルギーにしたいと、強く願っている次第です。
 八木幹夫会長、佐川亜紀理事長を支えながら、新たに選ばれた理事さんたちと共に現代詩の発展のためにまた詩人たちの親睦を図るため努力したいと思います。皆様のお力添えをお願いして、新任のご挨拶に代えさせていただきます。


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【歴代過去のあいさつ2019年】

会長のご挨拶 会長:黒岩 隆

 全く思いがけず、会長の大役を仰せつかりました。赫赫たる先輩の方々に続くには誠に至らない者で、身が縮む思いですが、幸いにも、山田理事長を始めとする経験豊かな理事の皆様が綺羅星のようにいらっしゃいます。そのお力を支えとして、なんとか二年間、微力を尽くして、現代詩人会のお役に立ちたいと思います。会員の皆様には、何卒よろしくご支援のほどお願い申し上げます。 日本現代詩人会は来年一月二十一日に満七十歳を迎えます。既に創立七十周年記念事業委員会が、新藤凉子氏を会長に開催され、実行委員会のもと地域別記念イベントが、本年十月、三国町で開かれるのを皮切りに、北海道から九州まで六地区で再来年三月まで予定されています。また、七十周年記念アンソロジーの刊行が着々と進んでいます。これを機会に、より多くの詩人の皆様が現代詩人会に関心を寄せ、積極的に参加して頂きたいと心から願っています。そして、この会は、日本の詩人の権益を団体的に守り、現代詩の普及発展のため協力し、国際活動を推進し、詩人相互の親睦を図ることを目的とするという会則一条を守ってゆきたいと思っています。そして何よりも詩歌を愛する人々に開かれた、楽しい会になるように努力したいと思います。

70周年に向けて 理事長:山田隆昭

 前期は、初めて会報を担当しましたが、会員の皆様のご協力によりまして、なんとか遅滞なく発行することができました。ありがとうございました。また、前期には、多くの詩人が入会され、紙面の構成に苦労しましたが、これは嬉しいことでした。詩の団体だけでなく、他の文芸団体でも、会員の減少と高齢化の現状があると聞き及んでいます。そうしたなかで、新たに入会する詩人が多いことは、とても心強いことです。一方で当会と詩界のために尽力された多くの詩人が逝去され、追悼文を依頼する辛い作業もありました。 さて、9月19日に行われた2019年度の第2回理事会において、理事長に指名されました。来年は1950年1月に当会が創立され、70周年を迎えます。10年前の創立60周年のときには、新川和江実行委員長のもとで、副委員長を務めましたが、その経験を生かせよ、ということもあっての指名かと思われますが、今後は70周年記念実行委員会と理事会が協力して、記念事業を遂行することになります。 その記念事業プレイベントとして行われる、今年10月の「ふくいの詩祭」ほか、再来年までに全国6か所で地域別イベントが行なわれます。これは、記念事業を行うにあたり、各地方の詩の磁場を大切にしよう、という意味あいで企画されたものです。また、来年五月開催の「日本の詩祭」も、70周年を踏まえての開催となります。これらの行事を会員の皆様で盛り上げてゆきましょう。 私自身も、黒岩隆会長のもと、理事の皆さんと協力して、微力ながらお役にたてるよう活動したいと思います。どうぞ宜しくお願いいたします。

副理事長就任のご挨拶 副理事長:田村雅之

 このたびは、大役を仰せつかり、いささか困惑しあたふたしております。微力ながら黒岩隆会長・山田隆昭理事長を支え、与えられた仕事をこなしたく、思います。応援宜しくお願い致します。 本年度、年が明けると、日本現代詩人会の七〇周年の年であります。 すでに会員の皆さまから、詩作品一篇と略歴の原稿をいただいて、『資料・現代の詩二〇二〇』の編集が着々とすすめられ、来年春早々に出版になるかと思います。 さっそくご注文下さった皆様のお手元に届くことでしょう。 詩作品提出の会員の総数は九四〇人近い数となってございます。 その書籍の中には、新藤凉子刊行委員長の挨拶、記念事業実行委員長の以倉紘平さんの「七〇周年を迎えるにあたって」、秋亜綺羅副委員長のまとめられた一六〇頁にわたる「日本現代詩人会の十年」、最後に、新延副委員長の「七〇周年記念イベントについて」の言葉が編まれております。六〇周年のときのような貼函入りの書籍ではなく、カバー装の大冊であります。これもひとえに、会員の多くの皆様のおかげです。この場を借りて、厚く御礼を申し上げます。 副理事長の仕事、たくさんあるようで不安ですが、どうか宜しくお願い申し上げます。


【歴代過去のあいさつ2017年】

新会長のごあいさつ 会長:新藤凉子

 今年は天候不順、台風による水害その上、この原稿を書いている9月28日には、衆院解散ということになってしまいました。 北朝鮮はミサイルを海の中に発射させて恫喝するし、デフレは脱却していないし、本当に私たちを取り巻く環境は険しいようです。この本が皆様に届く頃には政権も定まっていると思います。 そのような祈りに、会長の任務を引き受けざるを得なくなりました。どなたもお断りになったからだと思います。私も何回もお断りしているうちにフッと気づきました。 なにも皆様のお役に立つようなことをしてもいないのに、先達詩人という名誉を授けてくださったり、病気をしたり、身内を失って心細い折りには、心優しくいたわってくださったのは、おおくの詩人たちでした。

 恩を忘れたらいけません。これは生前の大岡信さんがおっしゃったお言葉です。それに周りを見回すと理事長をはじめ私より有能な方ばかり、思い悩むことはないのでした。 私たちの先輩、草野心平さんが常にモットーにされていたお言葉。われわれはわが国の詩を、 常に世界的立場において思考し、 旗も党ももたず、 詩自体の中に没入します。

 私なりに、投票はしますが、この会に政治は持ち込みません。森のなかをわたって行く風のように、癒される会の手助けをしたいだけです。 どうぞよろしくお願い申し上げます。

 

成長する詩人会のために 理事長:秋亜綺羅

 日本現代詩人会のHPも新装開店して1年以上が経ち、ずいぶん形が整ってきました。 会員同士の情報通信だけにとどまらず、ことば、詩、文学に興味ある若い人たちに刺激を与えようと、HPの編集方針は決められていくようです。 投稿欄の開設もそのひとつです。すでに多くの新鋭が誕生しています。 また日本現代詩人会では、入会を希望する詩人を募っています。詩人会に新しい風を吹き込んでください。大歓迎です。 入会をまだ迷っている、未来の会員も多いかと思います。疑問でも要望でもぜひ、ぶつけてください。メールでも、電話でも、FAXでもかまいません。待っています。 会員のみなさま。3年後には、日本現代詩人会も70周年を迎えます。新藤凉子会長、山本博道副理事長、菊田守・以倉紘平両総務、イベント総括の一色真理理事、広報総括の山田隆昭理事ほか、理事全員の力を借りて、成長する詩人会でありつづけたい。 会が存在するから、会員がいらっしゃるのではありません。一人ひとりによる詩人としての自覚と誇りが集まって、はじめて日本現代詩人会があるのだと、わたしは信じます。 気候も世情も不気味な昨今です。 けれど文化も、詩も、進化が止まる時などないでしょう。 各位のご健康と、ご健筆を祈念いたします。

ごあいさつ 副理事長:山本博道

 ここ何年も、詩や文章を書くことから遠ざかっていました。時間のある時は一人でアジアの国々に出かけ、夜のバザールを覗いたり、大河の風に吹かれたり、戦争や紛争の爪痕をめぐりながら、写真を撮ったりしていました。ですから、こうして人の目に触れるような文章を書くのも、いつ以来のことか、思い出せないほどです。 五年ぶりに理事に選ばれ、まだ、じぶんにもできることがあるだろうかと思いつつ、引き受けさせていただきました。どの世界も避けられない高齢化の波ですが、日本現代詩人会も若い人たちにもっと関心をもってもらうことが大事です。そのために、じぶんは何をしたらいいのか。 新藤凉子会長、秋亜綺羅理事長はじめ、長年の経験を積んで熟達した理事たちとともに、会員の声も聞きながら、少しでも当会の「明日」への力になれたらと思っています。どうぞよろしくお願いします。

 


【歴代過去のあいさつ2016年】

新会長のごあいさつ 会長:以倉紘平

会長:以倉紘平  会報が出る頃は、日本列島の北国では紅葉の季節ではないかと思います。ハプニングが重なって、私ごときが会長の任務を引き受けざるを得なくなりました。歴代会長の赫赫たる詩歴を思いますと、身が縮む思いですが、もう逃げる訳にはいきません。新延理事長を始めとする有能な理事各位と協力し合って、なんとか努めさせて頂く覚悟ですので、会員の皆様には、何卒よろしくご支援のほどお願い申し上げます。 会長職が(箱根を越えた)のは小野さん以来だと関西の詩友から言われましたが、私には、 日本の抒情詩についての確固とした見識の持ち合わせはありませんが、本居宣長の『うひ山ぶみ』の次の言葉は、大切にしています。本居さんは、古来日本人は、誰でも(うた)を詠んだと言い切っています。 (すべて人は、かならずうたをよむべきものなる内にも学問をする者は、なほさらよまではかなはぬわざ也・・) 学者はもとよりうたはすべての日本人にとって、溌刺たる心そのもの、健やかで自然な呼吸そのものだったようです。うたによって、万象に挨拶し、祈り、死者に、生者に話かけていたのです。今日の日本で、何故(うた)離れ、現代詩離れが生じたのか、考えるべき時が来ているのではと思います。 私は沖縄の詩と関りをもって長いのですが、沖縄詩の背後には、島の大自然、神々、ご先祖、名もなき無数の島人の力が、詩人の背中を押していると感じます。単独者として、孤軍奮闘されている都の詩人は、とても辛そうに見えます。来年の沖縄ゼミナールの宣伝になってしまいましたが、各地方の生活と文化には、詩歌の現状を打開する力があるように思えてなりません。

現代詩よ、元気あれ 理事長:新延 拳

理事長:新延 拳  「どうも現代詩に元気がないようだね」という言葉を聞くようになってだいぶ経つ。それを昨今では、他の俳句や短歌などの短詩型文学の人たちから聞くようになった。これにはいささかがっかりする。俳句や短歌が若い人にも注目され広まってきていることに関係しているのではないかと思う。例えば俳句を例にとると、芭蕉の遺語として有名な「俳諧は老後の楽しみ也」を引くまでもなく、以前はどちらかというと老人の文学として認識されていたのではないか。その結果、超高齢化に伴う商業誌の廃刊・大幅部数減、結社の先細り等々の具体的問題が顕在化していった。俳句界は一時この超高齢化ということに大変な危機感を感じ、俳句という詩型の死活問題として捉え、あらゆる啓蒙活動を行った。大盛況の俳句甲子園、学校の教師に対するセミナーをはじめとするきめの細かい手当など。現代俳句協会もインターネット俳句会を行うなど若者向けに新しい分野に進み、若い俳人を発掘する努力を重ねてきている。もちろん俳句界や短歌界の方法をそのまま取り入れる必要はないが、さて現代詩の世界はどうであろうかと考えざるをえない。 現代詩人会は、先人のご努力により誇るべき伝統を重ねてきている。しかしながら、年齢構成を考えると五年後十年後には一体どうなっているのだろう。伝統に安住するだけでは未来が展望できない。また、次の世代にきちんと引き渡してゆく責務もある。今理事会では、何とか多くの若い人にも現代詩人会もっといえば現代詩そのものに興味を持っていただけるよう一歩でも前進していきたいと考えている。

副理事長就任の挨拶 副理事長:田村雅之

副理事長:田村雅之  久しぶりに会の理事に選ばれました。夏の終わりの総会の席で、新任のご挨拶をして、さて今回はどんな役を引受けようかと迷っていたのでした。 理事会が九月七日に開かれましたが、あいにくわたしはイタリア・フィレンツェに所用で出かけていて出席かなわず、すべてを議長一任、ということにしました。 帰国すると、副理事長をということでありました。 二〇〇九年から十一年に、同じく副理事長を仰せつかり、多少なりとも経験がありますので、今回も駑馬に鞭打つ働きをと、粛然とお受けした次第です。 以倉会長、新延理事長を補佐し、会の発展に努めていきたく思います。皆様方の一層のお力添えをお願いし、新任のご挨拶に代えさせていただきます。

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