研究活動・親睦

新年会, 東日本ゼミ

東日本ゼミナール・新年会開催2018

●東日本ゼミナール・新年会開催
 「夫・車谷長吉」 高橋順子氏講演


写真左から講演する高橋順子氏、あいさつをする一色真理氏

 寒波到来の一月十三日、底冷えの午後にも関わらず、早稲田奉仕園において現代詩ゼミナール(東日本)は、六十六名の会員と一般参加者を迎えての開催となりました。司会進行は塚本敏雄さん・中本道代さんです。
 新藤凉子会長の開会のことばは、講演者との深い交誼もあり、温かい紹介でした。詩・小説やエッセーで活躍中の高橋順子さんが、上梓した『夫・車谷長吉』を基に「詩と小説の間」という副題での講演です。暖房装置の故障により室温が上がらず、急きょカイロが配られるなど、参加者には厳しい二時間となりました。が、文学と夫婦の修羅という興味深さによってか、寒さをしのぐ熱気が満ちていたようです。
 高橋さんはまず詩とは〈疑うこと〉と示し、散文とは次元が違うという端的な導入でした。そして『夫・車谷長吉』を三回忌後に纏めた契機を、〈書いてしまえ〉という彼の声に後押しされたと明かします。小説家としての夫の在り方と、妻の緊張感に満ちた位置を伝え、十一年余の激動の日々が彼の小説と高橋さんの詩を生み出した様子が浮かびます。ときにユーモアを塗して伝えられたことは、高橋さんの詩を理解するうえにも手掛かりとなります。
 さらに車谷氏の小説『漂流物』『武蔵丸』『変』などに触れ、私小説家としての日常と、妻となった自分も〈同罪〉〈共犯者〉だとの覚悟にいたった顛末が、迫力をもって語られました。彼にとり小説が自分の存在を問う〈生への祈り〉であるのに対し、高橋さんは詩が〈祈りに触れる〉ものだと通底するものを確信したそうです。車谷氏が書き終えると混迷が深まる様を見守った高橋さんが、人間の業を描く小説に対し詩は喜びをもたらすものだと逆説的に到達したという経緯は、多くの示唆を与えます。基本的に彼は〈耳の人〉で、土俗的な語りの文学として成立していったようですが、高橋順子さんには響きを確かめる詩が必然になったのでした。これらは参加者の質問への答えとしても、丁寧に説かれました。

写真左から司会の塚本敏雄・中本道代両氏、会場の様子

 詩の朗読は暖房が復旧しないため、別会場でとなりました。移動にも時間が必要でしたが、小会議室でかえって肉声が届く、顔が見えるという利点もあったようです。草野理恵子さん「夜/公園」「対岸の床屋」、黒岩隆さん「海鳴り」「青蚊帳」、清水博司さん「海峡」「杜黙」、竹内美智代さん「テゲテゲ」「汽車」、中井ひさ子さん「置いてきたもの」「死んだふり」、岩切正一郎さん「書物・砂・呼吸」「眠り・骨・血」などが表情豊かに朗読されました。閉会のことばは、一色真理さんでした。
 五時から再び会場を移し、五十三名の参加で新年会となりました。司会進行は、光冨郁埜さん・山本聖子さんです。開会のことばは以倉紘平さん、乾杯は菊田守さんで歓談・会食が始まりました。秋亜綺羅理事長の挨拶が手違いにより抜け、後に文書の形でとなりました。続いて遠方から参加された長崎や北海道の会員・新入会員の紹介で盛りあがりました。来賓挨拶は、五月の詩祭に参加される現代音楽家協会理事・松尾祐孝さん。ゼミナール担当理事麻生直子さんからの挨拶などがありました。山本博道さんの閉会のことばで盛会のうちに終了しました。

◆東日本ゼミナール出席者
(2018年1月13日・敬称略)
会員―菊田守・新藤凉子・浜江順子・山田隆昭・渡辺めぐみ・光冨郁埜・宮崎亨・鈴木昌子・草野理恵子・中井ひさ子・秋亜綺羅・春木節子・中本道代・塚本敏雄・鈴木豊志夫・以倉紘平・一色真理・若山紀子・原詩夏至・佐々有爾・菅原みえ子・清水博司・橘田活子・宮城ま咲・竹内美智代・福島純子・天野英・林田悠来・麻生直子・八木幹夫・北畑光男・真崎節・伊藤悠子・細田傳造・大掛史子・秋元炯・瀬崎祐・黒岩隆・曽我貢誠・鈴切幸子・藤本敦子・熊沢加代子・常木みや子・植村秋江・谷合吉重・藤井優子・広瀬弓・結城文・小野ちとせ・小山田弘子・関中子・春木文子・鈴木正樹・鈴木東海子・岡島弘子・中田紀子・新延拳・塩野とみ子・岩切正一郎・波平幸有・田村雅之・山本博道・田井淑江・大木潤子・小勝雅夫 

一般―岡安惠子・浅野幸子・真崎美奈子・松井康之

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