東日本ゼミ2015-2013
「東日本ゼミナール・in秋田」開く秋田の風土感が充溢して(2015)
10月12日(月)、秋田市「秋田キャッスルホテル」を会場に開催された。全体テーマは「秋田の文学と風土」。参加者は日本現代詩人会・秋田現代詩人協会会員49名、一般33名合計82名であった。一般の参加者が予想を上回った事と、市内2高校の文芸部員6名が顧問と共に参加してくれたのも嬉しい事だった。
第一部のゼミナールは保坂英世県現代詩人協会事務局長の司会で行われ、担当理事杉本真維子氏の開会挨拶の後、新延理事長の挨拶及び石川吾朗県現代詩人協会長の挨拶があった。
講演は佐々木久春氏の「秋田の文学と風土考―佐竹本歌仙絵を見ながら」。佐々木氏は奥羽の佐竹藩が莫大な金額を要する歌仙絵を所有するに到った過程を説明する中で、北廻船が秋田の文化に与えた影響の大きさ、人間の個性に風土や社会・歴史が相互に可逆的に影響を与えることも指摘した。
特別講演は「現代詩の今」と題して井坂洋子氏が行った。井坂氏は資料として須藤洋平、中島悦子、渡辺めぐみ、佐々木安美、杉本真維子の若手詩人の作品を取り上げ、会場にいた渡辺、杉本両氏に突然朗読をお願いするシーンも。「自分の秘密の扉をノックしてからでないと詩は書けない。ここから始まり多くの人の心に入っていけるかどうか」という言葉が特に印象的だった。
自作詩朗読は東野正(岩手)、亀谷健樹、吉田慶子、福司満(秋田)、佐々木英明(青森)、の五氏が行った。秋田の三詩人は全員秋田弁での朗読であった。
アトラクションは明治二十年代に完成されたという、木内勇吉一座による郷土芸能「猿倉人形芝居」の上演。コミカルで軽快な人形の動きに皆瞠目。
駒木田鶴子県現代詩人協会副会長の閉会の挨拶で第一部は無事終了した。
第二部は懇親交流会。県現代詩協会の吉田慶子、平塚鈴子両氏の司会で進行。アトラクションの浅野千鶴子氏の秋田民謡で会場は盛り上がった。最後の「ドンパン節」に合わせ理事長が踊る一幕もあり、楽しいひと時だった。
(秋田県現代詩人協会 成田豊人)
「日本現代詩人会東日本ゼミナールin札幌」開かれる(2014)
日本の詩のゆくえを見つめて
講演、北海道3詩人の提言、そして朗読
映像と縄文太鼓背に講演
2014年10月25日午後1時から札幌アスペンホテルで日本現代詩ゼミナール東日本(札幌)が開催された。日本現代詩人会員27名を含め参加者は78名。杉本真維子理事が開会の言葉、挨拶は財部鳥子日本現代詩人会会長と渡会やよひ北海道詩人協会会長が行った。
引き続き、ゼミナールの全体テーマである~日本の詩のゆくえを見つめて~と題して、原子修氏が講演した。大自然の理を軽んずるユーラシア系文明の拡大により、詩が衰退した。自然と共生した縄文人の文化文明複合の知恵を詩の創造の原点とし、退行化傾向にある日本の現代詩を「詩の機能と美と詩型の多様化、重層化」へ深化させるべきと論じた。講演のなかに、縄文詩劇の映像と縄文太鼓演奏を入れ、詩領域の拡張を示唆した。
(講演要旨)
「物・技術」に関わる〝文明〟と、「心・言霊」に関わる〝文化〟は、不可分の関係にある。我欲と暴力の是認によって自然の理に背いた〝ユーラシア系文明文化複合〟は、結果として詩の衰退を招いた。二十一世紀の現実である。しかし、ヘシオドスを祖とする〈言葉の精密な意味での現代詩は、一貫してそれを批判し、人として歩むべき真の姿を追求してきた。
幸いにも私達の遠祖の縄文人は、大自然の摂理に従って一万年もの間、戦いのない世を創造した。私達詩作者は、その知恵を鑑(かがみ)とし、決して過去へと退行することなく、〝縄文系文化文明複合〟の哲理をふまえて、すぐれて感動的な〈現代詩(、、、)〉の創造に励むべきではないのか。ともすれば、〝文明文化複合〟としての都市生活に溺れて己のポエジーを〝日常的な感性と思惟〟に限定しがちな潮流をこえ、詩精神や詩形の多様化、重層化を実現し、日本語詩圏の成熟をみるべきではないのか。
三詩人が独自の視点で提言
続いて、提言~日本の詩のゆくえを見つめて~が行われ、橋本征子氏は「詩の書き手は自己の想像力の内に文明批評的要素を持つことが必須である」と述べた。渡辺宗子氏は「死者の山が築かれているこの時代にー<シモーヌ・ヴェイユ>」という題目で権力に対する抵抗をやめない言葉について論じた。若宮明彦氏は漂流壜あるいは投壜通信を例にあげ、パウル・ツェランの視点から、詩の言葉を発することの意味を考える必要があると論じ、最後に全体質疑を行った。
次いで、自作詩朗読に移り、森れい氏、荒木元氏、村田譲氏、熊谷ユリヤ氏、渡会やよひ氏(以上北海道)、田中眞由美氏(埼玉)、清岳こう氏(宮城)、藤田晴央氏(青森)の8氏が個の世界を多彩に展開した。
花を添えたムックリの演奏
アトラクションは、石井ポンペ氏のアイヌ民族に伝わるムックリ等の演奏。各地から集まった参加者に感銘を与えた。
第一部閉会の挨拶は当ゼミナールの実行委員長でもある原子修氏が謝意を含めて行った。
第二部の交流会には38名が参加した。三村美代子会員の司会のもと、岡島弘子理事の開会の辞と金井雄二副理事長の挨拶に続いて綾部清隆会員の乾杯の音頭で交歓の幕が開かれた。各地から参加された方のスピーチも交えて宴は盛り上がり、鷲谷峰雄会員の乾杯で閉会した。(文責・坂本孝一)
「東日本ゼミナールin長野」開く(2013)
信濃路そして松代文化を体感
10月12日(土)、長野ホテル犀北館にて開催された「現代詩ゼミナール〈東日本〉in長野」は、「信濃路そして松代文化の体感を!」キャッチフレーズに、日本現代詩人会・長野県詩人協会会員67名、一般11名の参加で成功裡に幕を閉じた。
第1部ゼミナールの司会は酒井力、小島きみ子が受け持ち、講演の清水茂先生「存在と詩のことば」は、フランスの詩人イヴ・ボヌフォワの黄昏の情景から問題提起をされ、高森忠義長野県詩人協会長は「北信濃の前衛文化」で、松代が生んだ信州人についての語りで盛り上がりを見せた。
自作詩の朗読は、秋山泰則(長野)、清岳こう(宮城)、後藤基宗子(福島)、竹内清志(長野)、鈴木良一(新潟)、佐相憲一(東京)、狩野敏也(埼玉)、柳沢さつき(長野)の各氏が個性豊かな作品を会場に響かせた。
第2部懇親交流会は畠山隆幸、小林由美子の司会で、先ずはアトラクションとして善光寺木遣りが披露された。平成3年に、長野市無形文化財に登録され、善光寺の諸行事、いろいろなお慶びに唄われ、カーネギーホール、国立劇場、長野冬季五輪前夜祭等活躍の場を広げている面々の声は、いやが上にも会場を熱気に包みこんだ。
久しぶりの再会にグラスを合わせる人、名前は存じても初対面の人、各地から集う詩人たちで長野の夜が賑わいに酔いしれていく頃、遠方よりの客人をもてなす松代藩特有のお肴行事が始まる。
講師の清水先生、朗読者のみなさん、日本現代詩人会の役員に、長野県詩人協会から、ご苦労様の盃を申し上げ、並々と注がれたお酒の肴には謡曲の小謡が添えられる。
お返しの盃があり、信州の儀式は格調が高い。やがて万歳三唱で締めくくられるが、これも3つ繰り返される。
翌日は松代方面の観光で、負の遺産大本営地下壕、大島博光記念館と松代を満喫して頂いた。
(長野県詩人協会事務局長・和田 攻)