各地のイベントから(2019.11会報155号より)
各地のイベントから
埼玉詩人会「詩祭」
―埼玉の詩の源流をたずねて
令和元年五月二十五日(日)さいたま文学館にて実施された。Ⅲ部構成で、第Ⅰ部では「第二五回埼玉詩人賞」の贈呈式が行われた、平野文子氏の「羽をかざって」(二〇一八・一一・一五発行、土曜美術社出版販売)に賞状と副賞が贈られた。副賞は賞の設定以来、額に収められた藍染の画で、太陽を背にした雑木林を描いた陰影の美しい日本画。埼玉詩人賞を目指す詩人たちの垂涎の的になっており、平野氏はまさか自分が、と喜びの贈呈式となった。選考委員長の清水榮一氏は「歳を重ねた自己の認識と奥深い密やかな見識の表白、人生を描くその生き方に凛とした美しさがある詩集」と講評した。
第Ⅱ部は、「―埼玉の詩の源流をたずねて」のテーマのもとに、県内に居住し、埼玉の詩の隆盛に貢献され、広く人口に膾炙した先達詩人の中から、「吉野弘」と「秋谷豊」を挙げ、両者に直接薫陶を受けた二名の講師にその詩業とお人柄などの講話と作品の朗読を聞く。
吉野弘の講師は田中眞由美氏。身近に指導を受けた当時の新座での教室の様子、吉野弘の詩に向かう生々しい声、数々のエピソードを語った。
また秋谷豊の講師は秋山公哉氏。秋谷豊は埼玉詩人会の発足に大きく貢献し、また、主宰する詩誌「地球」を石原武、新川和江氏を両輪に牽引し、世界詩人会議を開催した。秋谷豊の詩人、また登山家としての豊かな人間性を語った。当会会員は旧「地球」の同人も多く、話を懐かしそうに聞き入っていた。秋谷豊の死後、現在も「ランプ忌・それでも地球は回っている」の例会を年に一度、旧同人で開催している。 第Ⅲ部では、バイオリン、チェロの演奏で心落ち着く時間を過ごしたあと、本年、第五二回日本詩人クラブ賞を受賞した高橋次夫氏による小講演。受賞詩集「石の懐」の創作の想い、作品に対する自己精神の反映などについて、朗読を交えての語りに八十名を越える参加者は聞き入った。
(埼玉詩人会理事長 林哲也)
長野県詩人協会
2019現代詩ゼミナール
六月二十三日(日)長野県詩人協会2019「現代詩ゼミナール」が、松本市の勤労者福祉センターで開かれた。会員三名による自作詩朗読の後、田中眞由美氏の講演が行われた。
本協会は、年間三回(総会も含)それぞれ、講師をお願いして現代詩について研鑽させていただいている。
昨年度の十二月二日の「詩人祭」において、北岡淳子氏・県内の詩人(北川道雄・和田功・酒井力)で、『現代詩の難解性』のパネルディスカッションを行った。多様化された現代社会の中で詩を書く難しさ、詩人の意識の重要さ、比喩のイメージ化の難しさ等。建設的な意見が活発に出された。
また、本年の三月十七日(日)総会において『詩への祈り』と題し、川上明日夫氏の講演をお願いした。詩は心から出て、心に帰る。そのために比喩がある。比喩は、ダブルイメージをもつこと、長く詩を書くことが大事だ等のお話しがあった。
田中眞由美氏には、『詩の生まれるところ―吉野弘の手法』についての講演をお願いした。
田中氏は、松本市に生まれて、高校まで過ごし、父親の定年後上田に引っ越し、東京の大学、就職、結婚、その後、埼玉県新座市に住居を定めた。市の公民館活動で、吉野弘の現代詩講座に参加したのが現代詩との最初の関りであったと、話された。
吉野弘氏の手法を四点にまとめ、具体的に話をされた。「滝」「霧」「イナゴ」の詩で『人と違う見方をしてみる』こと、「静」「浄」「対決」の詩で『観察による発見』、「風の中に」、「I was born」で『言葉の不確かさの可能性』、「初めての児に」「紙風船」で『矛盾がその本質をなしている詩』について解説をされた。そして、「読み手に納得のいくような詩であったら、虚構であっても良い」「本来の言葉の意味作用をいかに解き放すか、ここに詩が生まれる」と話された。その後、田中氏自身の詩「肋骨」「確かめる」を朗読された。
参加者は、充実した時間を過ごすことが出来、今後の活動に生かされることを期待したい。
北関東詩人団体交流
「現代詩ライブin群馬」
北関東四県の詩人が、七月二八日に前橋市に集まる初めての催し、一部朗読会、二部討論会、三部親睦会の構成に、埼玉二二名、群馬二六名、栃木一二名、茨城一二名、特別参加二名の七四名で盛会であった。茨城は硲会長始め全員宿泊参加で、主催者を励ましてくれた。交流会の馴れ初めは、私と高山利三郎氏の会話が発端で、群馬詩人クラブ幹事会で「まず、群馬が動こう」との力強い同意の許、何時、何処で、何様に、討議を重ねて、三県(埼玉、栃木、茨城)への交渉、開催日、会場探し、参加者確認、帰宅時間考慮、宿泊手配、資料検討と充実の時間を頂き、現実のものとして表記行事が立ち上がりました。関係各位の協力、ご指導が有ったからの事です。
当日長雨も止み、両毛三山(赤城、榛名、妙義)の頂きも美しく、参加者を歓迎している様でした。
開会は須田千香良氏のチェロ演奏で関口将夫総合司会者が、須田氏の紹介、演奏のカザルス「鳥の歌」の説明、同曲が演奏され好評を博した。開会の辞は川島完氏が群馬と繋がりの詩人の事を話し、この交流から新しい詩の世界が生まれる事に期待すると述べた。その後、主催者挨拶堀江泰壽、共催者挨拶は硲杏子、北畑光男、本郷武夫、各県会長に、後援者挨拶は北岡淳子氏にお願いし、一部朗読会へ進み、埼玉、秋田芳子氏、鈴木昌子、林哲也、向井千代子、深沢朝子各氏、栃木、貝塚津音魚、こやまきお各氏、茨城、網谷厚子、黒羽由紀子、内藤紀久枝、八重樫克羅各氏、群馬は群読の形で新井啓子、佐伯圭、金井裕美子、関口将夫各氏が参加、各朗読者の個性の輝きが聞く者の心に感動を与えてくれた。二部討論会は高山利三郎氏議長の許で、各団体の現状と課題の報告が有り、各県行事に参加しあうと提案があった。三部親睦会は和やかな雰囲気で、親睦の場に相応しい会となった。手探りで出発した四県交流は有意義に幕を下した。ご後援に感謝致します。(堀江泰壽)