「現代詩人賞にまつわる思い出 甲田四郎」公開しました
現代詩の記録
現代詩人賞にまつわる思い出
甲田四郎
2013年11番目の詩集「送信」で現代詩人賞を貰った時、ちょうど遊びに来た中学時代の友達二人にカミさんが、よせばいいのにわざわざ二階へ取りに行って持って来て、今度出したこれ、大きな賞を貰ったのと、渡してしまった。一人はまだこういうのやってたのと言ったきり音沙汰ないが、もう一人は近所のかかりつけの眼鏡屋で、私は度が変わるとかツルがズレる度行っていた。その息子が眼鏡を選び、私の顔にかけて、ツルの具合を丁寧に直してくれるのだ。それから少し経ってまた行ったら、息子がじつにヘンな目で、私をうさんくさい人間のように見るのだ。私はそれきりそこへ行かなくなってしまった。詩集を上げたおかげで友達は客を一人失い、私は眼鏡屋を失ったのだ。別の眼鏡屋に行ったが、そこはじき廃業してしまった。外にも眼鏡屋はあるが、モウ面倒。同じ遠視の眼鏡を使い続けている。
私は今、八六歳、二〇一九年に12番目の「大森南5丁目行」を出して、これが最後のように思っていたが、先日注文が来た。有難い。なんとか書いていきたい。