研究活動・親睦

各地の声・各地のイベント

各地のイベントから(会報172号から)

各地のイベントから(会報172号から)

第63回中日詩祭―中日詩人会・
     中日新聞社 共催―報告
             中原秀雪

講演をする八木幹夫氏


 第63回中日詩祭は、2023年7月2日 (日) 午後1時より、名古屋市の電気文化会館にて開催された。
 第一部は、中日詩人会会長 (中原)と、中日新聞社文化芸能部部長・平岩勇司さんの挨拶で始まった。次いで選考委員長の林美佐子が中日詩賞の選考経過を報告。『猫まち』で中日詩賞を受賞された山崎るり子さんと、『ヘビと隊長』で中日詩賞・奨励賞を受賞された桑田今日子さんに賞状と花束が贈られた。受賞者の紹介では、長女の石井まゆさんが山崎さんの詩集出版の経緯を、冨上芳秀さんが桑田さんの詩歴等を語られた。山崎さんと、桑田さんの受賞挨拶と詩の朗読で一部終了。
 第二部は、八木幹夫さんの講演。演題は「私の詩的遍歴 (短歌・俳句・詩にそって)。副題は「 『わたし』から離れる旅、『わたし』へもどる旅」。
 青年期には、若山牧水や寺山修司等の短歌の影響を受けた。特に、啄木の『一握の砂』に心酔し、ここに詩があると思った。宮沢賢治や朔太郎の詩を読み耽った。
 入沢康夫の評論集で、「私」の詩には限界があることを知り、個人的な詩を書くことを避けた。俳句は情を引きずらず、思いを語らない。俳人・小沢信男の厳密な視点を持つリアリストに学んだ。
 父の死をとおして、難解と感じていた西脇順三郎の永遠の無常の詩の深さに気づいた。『旅人かへらず』の私を離れて、江戸の花街へと時空を移動する詩の手法は、自著の『野菜畑のソクラテス』にも影響を受けた。
 77歳になって、私を語らず、まわりを書くことで本体が現われて来ると思った。独白から対話や、大岡信の孤心から「うたげ」への思想を大切にした。
 第三部アトラクションは、サクソフォーンの演奏。サックスは平井尚之、電子ピアノ・大石有美、ベース・大久保健一、ドラム・山田信晴。「我が心のジョージア」などジャズの名曲で魂を揺さぶられた。終わりに中日詩人会副会長の古賀大助から閉会の挨拶があり会を閉じた。来場者が増えたことが、会に花を添えた。


現代詩ゼミナール報告   長野県詩人協会会長 鹿野 剛

「詩の授業」風景


 7月23日(日)に、松本市勤労者福祉会館に於いて、第30回現代詩ゼミナールを開催した。(参加者25名)
 午前の第一部は講師に加藤廣行氏をお招きし、『詩にきいてみる~今日も僕らは対話を試みる』という演題でお話をお聞きした。
 大伴家持、三好達治、T・S・エリオットの詩には、時代が異なっても自分を対象化する視点と表現に共通するものがある。また、一見読み易いと思われる吉野弘「虹の足」や津村信夫「冬の夜道」には、読者の想像を促す仕掛けがある。難解と言われている吉岡実「静物」も、一つずつ読み解いていくと、分裂を超え崩壊していく現代の不安が浮き彫りにされてくる。名作は時代が根にあり、読み継がれていく。
 他に流行歌の歌詞や山村暮鳥の作品などを取り上げながら、正確に深く読み取ることで、詩とどんな対話ができるか、分かり易く話していただいた。
 第二部は、大町市が主催する「北アルプス雪形まつり」※で表彰された二人の小学生を招いて、『子どもたちの朗読と詩のお話』を行った。参加者は子どもたちを囲むように座り、「子どもと大人の参加型授業」という初の試みに臨んだ。
 小学生に続き、会員も指名されてそれぞれの個性で朗読する。加藤先生からいくつかの問いかけがなされる。どんな工夫をして読んだか、この詩は誰に向けて書かれているか、どんな仕掛けがあるか。
 読み手の声質や抑揚、間の取り方等によって、言葉が一層広がりと深まりを増してゆく。意味を読み解きながら朗読される度に、生き物のように自在に詩が輝く興奮を参加者は共有した。得難い時間となった。
※北アルプス雪形まつり
 今年で22回目。各種のステージ発表と共に、児童生徒による詩、短歌、俳句、絵画のコンクールの入選者の表彰が行われる。


講演「夢二」と朗読を満喫 ポエトリー岡山に40人(副会長・柏原康弘)

自作詩を心を込めて朗読する会員(前列左端)


 岡山県詩人協会(上岡弓人会長)は7月29日、詩を楽しむ催し「ポエトリー岡山2023」を、岡山市北区の吉備路文学館で開きました。1部では会員の斎藤慶子さんが「竹久夢二の詩~もつれてめぐる夢と詩(うた)」と題して講演。2部では当協会が出版した『岡山県詩集2023』の参加者による自作詩などの朗読が行われ、詩のファン40人が、たっぷりと聞き入りました。 この催しは、岡山県詩協が総会に合わせて会員向けに開いてきた講演などの催しを、詩の愛好者の裾野を広げる狙いで一般にも開放したもの。昨年始めて2回目で、一般参加は5人でした。
 竹久夢二(1884~1934年)は地元岡山県瀬戸内市出身で大正ロマンを代表する画家、詩人。斎藤さんは夢二の詩人としての側面にスポットを当てながら、哀愁に満ちた秀作の数々を紹介。その生涯については女性スキャンダル続きで、数々のわがまま勝手な振る舞いがあったことも話しました。
 「夢二は寂しがり屋で独善的で自己愛が強く無類の女好き。だから今も多くの人を惹きつけるのではないだろうか」と指摘しました。
 岡山県詩集は隔年で発行しており、朗読では参加会員8人が個性豊かな自作詩を披露。このうち中桐美和子さんは満92歳で、「一族」「ねがい」など12の小品からなる「試作 四行詩 老い楽」を、力強く朗読しました。吉田博子さんの「母の日の贈り物」は、あきらめていた息子からの贈り物が届いたという内容で、母としての素直な喜びが伝わりました。それぞれ講評や会場からの質疑もあり、詩に理解を深めました。
 最後に、朗読活動を行っている会員の中川貴夫さんが「出会いそして別れ」と題して名詩8編を朗読。茨木のり子の「夢」、谷川俊太郎の「しぬまえにおじいさんのいったこと」などが、音楽とともに声量豊かに読み上げられ、会場から感嘆の声が聴かれました。
 参加者からは「楽しい時間を過ごせた」「素晴らしい芸術は私生活がいい加減でないとできないのかな」などの感想が寄せられました。
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