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2024年第8回HP現代詩投稿欄「新人賞」「新人」発表

2024年第8回HP現代詩投稿欄「新人賞」「新人」発表
 「新人賞」末野 葉
 「新 人」nostalghia たいち 田中綾乃

 日本現代詩人会ホームページ現代詩投稿欄の第8回年間「新人賞」「新人」が
2024年3月10日(日)、早稲田奉仕園セミナーハウスで開催された選考委員会で決定しました。選考委員は北原千代氏、根本正午理事、渡辺めぐみ理事(選考委員長)。投稿作品は、第28期(2023年1月~3月)429篇、第29期(4月~6月)575篇、第30期(7月~9月)480篇、第31期(10月~12月)509篇、計1993篇であり、延べ投稿者数は、1143人で、各期の入選、佳作をそれぞれ5篇ずつ選び、HPで発表してきました。その入選者を対象に年間の賞を選出しました。以下に各受賞者の経歴と言葉をご紹介します。 (渡辺めぐみ)

【新人賞・末野 葉(すえの・よう)】
1989年生まれ。東京都在住。
 投稿規定にある「詩の上達を目指す」の文言に導かれ、初めて詩の投稿を始めました。毎期、入選作を読み、その選評を読み、佳作の選評を読んで作品を想像することは私にとって素晴らしい学びの場でした。選者の先生方、ありがとうございました。新人賞を賜り大変光栄に思います。

末野葉


【新人・nostalghia】
1991年4月2日生まれ。静岡県沼津市出身、東京都府中市在住。
 詩をつくることは、ひとつの姿勢なのかもしれないと最近よく思います。私はあまりにも弱く、いつも誰かに支えてもらってようやく姿勢を保てています。一年間投稿を続けてこられたのは、多くのひとが、私の詩の姿勢を正しつづけてくれたおかげだと思います。
 このたびは新人に選んでいただき誠にありがとうございました。そして、投稿欄という貴重な場を設けてくださった日本現代詩人会の皆様にも深く感謝申し上げます。

nostalghia


【新人・たいち】
1987年生まれ。福井県出身、東京都在住。
 日々出逢うたくさんの事象の、奥深い所にあるものを、この身体で感じとって、詩の言葉にしてみたいと思っています。今回、選者の先生方に頂いた選評は、私が無意識に志向していたものに光を当て、気づかせて頂けたのだと感じています。今回、たくさんの方に読んで頂ける機会を下さり、ありがとうございました。

たいち


【新人・田中綾乃(たなか・あやの)】
 一年間、いつも心のこもった選評をいただき、大きな励みになっていました。私自身の見えていなかった私が見つかり、詩を奥深く読む術を知るきっかけとなった、極めて尊い経験でした。
 選者の先生方、運営の皆様に心より感謝申し上げます。

田中綾乃


●選考経過報告
     渡辺めぐみ(選考委員長)

渡辺めぐみ氏


 2024年の第8回HP現代詩投稿欄新人賞及び新人の選考会は、早稲田奉仕園セミナーハウスにて、2024年3月10日(日)午後3時より6時まで、塚本敏雄理事長、秋亜綺羅HP担当理事及びズームでの参加の光冨HP委員の立ち会いのもとで開催されました。選考委員は北原千代氏(ズームでの参加)、根本正午理事及び渡辺めぐみ理事。互選により渡辺が選考委員長を務めました。
 初めに1年間の選考の所感を述べ、選考方法についての提案を行いました。所感としては各委員の選考感覚、詩観に隔たりがあり、渡辺の選んだ作品に関しては1回のみの入選や佳作に選んだ作品にも深く惹かれる作品が存在したことなどです。しかし、投稿欄新人賞及び新人が作品ではなく作者に与えられる賞であることから、基本的には入選回数の多い方々にさしあげ、新人賞の選考対象者の中から新人を選出することを提案し、他の委員の方々の同意を得ました。そこで、光冨HP委員作成の入選回数を記した資料などに基づき、各委員が推したい候補者について推薦理由を述べ、全委員で具体的な作品について検討しました。
 選考対象となった方々は、入選回数4回から2回までが石川順一、末野葉、nostalghia、芦川和樹、柿沼オヘロ、吉岡幸一、高橋克知、田中綾乃、渡邊荘介の各氏、入選回数は1回でしたが新人としたたいち氏、散文的な詩ながら将来性を考慮した南田偵一氏、鋭い切り口と卓抜な発想を持つ阿呆木種氏です。渡辺は、優れた語彙力と生命感を合わせ持ち意味に回収されない独特のスタイルのリズム感のある詩を書く芦川氏、小説と詩の境界域で生きる意味を教訓的かつアイロニカルに問いかける寓意的な物語詩を紡ぐ吉岡氏の2名を評価していましたが、芦川氏は投稿途中で現代詩手帖賞を受賞され、吉岡氏は複数の受賞や入選歴を有し新人の域を超えているとの指摘が他の委員たちからありました。このため詩集賞を目指していただきたく思い、全委員で受賞対象からはずしました。そして協議の結果、最終投票2対1で末野葉氏を新人賞にnostalghia氏を新人に選出し、更にたいち氏と田中綾乃氏を新人としました。
 ナイーヴな感性が反映している末野葉氏の作品(4回入選)は、自己と自己を取り巻く身近な世界を凝視する姿勢の誠実さにインパクトがあり、自分の価値観と体感で生きることはどういうことかを摑みとろうとしているところに感銘を受けました。詩語の構築力とテンションを徐々に高めてゆく展開感で魅了するnostalghia氏(3回入選)の作品には、利他的かつ肯定的価値観が内包されています。お2人の自らの思想を力強く訴えかける筆力に拍手です。たいち氏は簡潔な詩語の運びに身体感覚とポエジーが光り、田中綾乃氏(2回入選)は理念による詩行ではあるものの、虚無的な現代詩が多い時代にあって社会の不条理に真向かい敬虔な祈りを孕む作品であることが貴重であると判断しました。おめでとうございます。今回新人賞及び新人に漏れた方々も詩作を続け、御発展くださることを御期待申し上げます。

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