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各地の声――近江詩人会の現在

各地の声

近江詩人会の現在 近江詩人会 森 哲弥

 近江詩人会は一九五〇年八月二十日に創立、二〇二〇年十一月現在で創立七〇年になります。この間「近江詩人会四十年」、「同 五十年」、「同 六十年」、このほど「同 七十年」を発行し(写真)、会員の作品や会の詳細な経緯を収載して来ました。
 会発足時の会員は十一人余、その後増減しながら七〇年の歳月を経て二〇二〇年十一月現在の会員数は五十八人になっております。現在五〇歳代から九〇歳代までの会員がいます。
 近江詩人会は毎月欠かさず「詩人学校」を開催し作品の合評会をしています(昨年はコロナ禍のため初めて休校もありました)。テキストも『詩人学校』と称しB5判で月々の原稿量により九頁から十二頁になります。寄稿者は二十人から二十五人、出席者は十人から十五人くらいです。欠席の会員すべてにテキストと「詩人通信」が郵送され、寄稿して欠席した人にはその月の作品に二~三人による講評が同封されます。
 テキストは二〇二〇年一一月で「詩人学校 第八四四号」となり、この間一度も休刊はありません。会費は月五百円、年六千円です。
 会員の詩集等の出版に対しては相当分にいたった時点で会として誌祭を開催しお祝いします。当事者も会費は払います。
 近江詩人会の雰囲気、気風については京都新聞連載記事をまとめた「先生のいない学校―近江詩人会の思い出(一九九五年五月十五日発行)」に近江詩人会を当初から支えて下さった故大野新氏が次のように言っています。
「…近江詩人会は創立以来規約らしい規約はなかったが、先生をおかないという不文律の気風がとおっていた。『詩人学校=poets school』というテキスト名は、諧謔ともユーモアとも自虐ともとれるだろう」 
 作品を前にしたときメンバーは対等です。思ったことが遠慮なく発言できる雰囲気が保たれています。分別盛りのメンバーですので若いときのような打打発止にいたることはありませんが、温厚な言葉に包まれていて実は後でボディブロウのように効いてくる批評も時にあります。
 近江詩人会としての作風のようなものがあるかと問われれば即座に否とこたえます。これはきっと「先生をおかない不文律」にもよりましょう。日常生活に詩作の基盤をおく人、逆に日常性を厳しく排する人、言葉の面白さから筆を起こす人、美意識にこだわる人、時事問題に敏感に反応する人等々、また詩形においても行分け詩、散文詩、定数行詩、ソネットと多様性に満ちています。そして時々、急に作風を変える人が現われたりして「あれっ」と《楽しい裏切り》にであうこともあります。
 いま手許にある「詩人学校 八四三号」に寄せられた作品のタイトルを記しておきましょう。
《さあ 通れるなら》《わが火の山に草萌ゆ(訳)》《残照》《推移》《ビルの谷間》《個人的な発見》《クレージー》《海鳴りの奇譚》《ランナー(匍匐茎)》《薫風や素朴な湯呑み手びねりの》《かばやのカバ子》《アブチロン》《レオ、good boy》《共存》作品の多様性を幾分でも感じて戴けたかと思います。
 このような活動の中から多くの仲間達がH氏賞始め全国的な詩集賞を受賞されていることは会の誇りです。
 そして近江詩人会が七〇年もの長きにわたって活動を続けてこられたのは会員諸氏の弛まぬ意欲と会員、会友(OB)の方々の息長い応援があってのことと思っております。また今、会の世代交代を目指してプロジェクトチームを作りさらなる発展を目指しているところであります。

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