各地の声(2019.11会報155号より)
各地の声
徳島現代詩協会、そして〈今〉オリンピック讃歌の訳詩・詩人 野上彰『前奏曲』 会長 山本泰生
徳島現代詩協会は、一九八七年に発足した。二〇一七年に創立三十周年を迎え、その記念事業も終えて新たな一歩を踏み出している。今回の『徳島現代詩の七〇年(徳島現代詩協会創立三〇周年記念)』誌により振り返る。井内輝吉会長をはじめ創立時役員十三名の内、扶川茂、宮田小夜子、山本邦子の三氏のみと寂しくなった。
創立から十年(一九八七~一九九六年)
協会のエンジンである各同人誌がより活発化し、具体的な運営が固まった時期。「現代詩の朗読と講演の会・コンティオ・ポエティカ(ラテン語で詩をめぐる集い)」の開催と「年刊詩集」の発刊が中心的事業として定着する。また一九九四年には、『徳島の現代詩史一九四五~一九九三』を刊行し、徳島の戦後詩から当時までの全体像(含む、詩人百人の作品集)が明らかとなる。同年には、詩を書く若者を一般公募して若い詩人の発掘をめざす詩誌「詩庵」が創刊された。
十周年から十年(一九九七~二〇〇六年)
この十年も引き続き、「コンティオ・ポエティカの開催」および「年刊詩集の発刊」は定期的に実施した。一九九八年には、明石海峡大橋開通記念として、兵庫県現代詩協会と徳島現代詩協会との共催で詩の朗読と講演の集いを開催した。一九九九年、「第一回現代詩全国交流展」を開催。全国各地から協会宛に送られてくる数多くの詩集・詩誌等を展示、現代詩への関心が高まる。二〇〇三年、「詩のボクシング第一回徳島大会」(主催 徳島県立文学書道館)を開催協力する。
二十周年から十年(二〇〇七~二〇一六年)
この十年、「年刊詩集の発刊」は定期的に実施したが、「コンティオ・ポエティカ」は二〇〇八年が最後となり、若手中心による新企画の朗読会「フラ・ポエシア」を五年開催し終了した。二〇〇七年、創立二十周年事業、『新・徳島の現代詩史一九九四~二〇〇六』を刊行、前書の続編を完成する。二〇一四年、「ポエムカフェ」を発足。「想像力を刺激する」ことでポエジーを生み出そうとする試み。毎年八回程度様々なテーマで議論したり、専門の講師も招いて新しい方向性を探っている。
三十周年から(二〇一七年~)、そして〈今〉
活動は、私、牧野美佳副会長、竹原洋二事務局長、森口啓子会計理事ほかの連携で充実を図る。今の中心課題は、東京五輪が迫るなか、オリンピック讃歌の訳詩・詩人野上彰の詩集『前奏曲』(左右社刊・六月発売)を全国にアピールすること。
野上彰、本名藤本登。一九〇八年徳島市生まれ、一九六七年没。一九六四年に開催された東京オリンピック開会式において、野上彰訳詩、古関裕而編曲による「オリンピック讃歌」が歌われ、一九九八年長野オリンピックでも合唱された。生前唯一の詩集を復刻、川端康成序文、猪熊弦一郎装画、また全十九曲のCD付である。幅広いジャンルで異才を発揮、合唱曲「落葉松」や森繁久彌「銀座の雀」は広く愛唱され、ボブ・ディランの「風に吹かれて」やピーター・ポール&マリー「パフ」の訳詞者としても知られている。半世紀の時を超えて、是非ご一読ください。