各地のイベントから(会報155号から)
●現代詩ゼミナールin山梨」開催
山梨県詩人会 こまつ かん
講演する 阿毛久芳氏
山梨はぶどうの葉のかたちをしています/ぶどうの葉の中に すべてがあります//桃の花色に盆地の一面が染まる春//夏から秋へ さまざまなものが豊かに実り//凍てつく夜空の星々にむかって/道祖神祭の炎と火の粉が/まいあがる 冬//人々は自然を敬い 自然を畏れ/自然とともに四季を生きています//山梨はぶどうの葉のかたち/きょうは ようこそ おいで下さいました(詩・ひろせ俊子)
2019年4月21日22日、笛吹市石和温泉・華やぎの章「慶山」で現代詩ゼミナールは開催されました。花・果実・湯…自然の恵みを享受した憩いの街での詩人の集い。オープニングは「山梨はぶとうの葉のかたち」の朗読で。ゼミナールの司会は山梨県詩人会のArim&数野徳子。朗読に続いて開会の言葉を一色真理イベント総括担当理事が述べ、挨拶は日本現代詩人会・新藤凉子会長と山梨県詩人会・安藤一宏会長よりいただきました。
講演は都留文科大学理事長兼副学長で名誉教授の阿毛久芳先生による「国語教育の方向と日本の近・現代詩の位置」と題してのお話でした。まず、2018年に文科省より示された高等学校の国語の新指導要綱について概要説明。来年は小学校の、その翌年は中学校の教科書がかわる予定で、非常にインパクトがあるとのこと。国語教育の現状を語るなかで、文学の比重が軽くなるのではないかとか、詩は試験問題にしにくいなどとの話もありました。さて、従来は「国語総合」として現代文編・表現編・古文編・漢文編との内容でした。それが、たとえば新設科目の「現代の国語」では実社会における国語の諸活動に必要な資質・能力の育成に主眼を置くとしています。更に新設科目は「言語文化」「論理国語」「文学国語」「口語表現」「古典探究」。感じることや考えることは言葉とともにある。言葉への深い理解は、どのように感じ、考えたかを明瞭にさせる方法を手にしていることを意味している。また、感じている感じを記号化することは、スマートフォンにおいては絵文字、顔文字の画像で伝える手段がある。だが、どのように感じているかを説明するには、思考と論理が必要であり、言葉を介在させなければ伝わらない。多面的な心の状態を優れた表現によって描き出している近現代の文学作品、古典作品の読みの重要性は、実用的な文章が強調されればされるほど、現在むしろ強まっていると考えられる。意味機能に基づく論理があると同時に、音とイメージを含めた心の論理というものがあると結びました。次に、言葉が詩になる時について谷川俊太郎・萩原朔太郎・八木重吉の詩作品を例に説明しました。また、高等学校の国語の教科書に掲載された詩の紹介では島崎藤村・高村光太郎・室生犀星・宮沢賢治・中原中也・三好達治・石垣りん・新川和江・谷川俊太郎・吉野弘・茨木のり子・吉原幸子などが…。最後に最近注目した詩作品として辻征夫「弟に速達で」、藤井貞和「あけがたには」、平田俊子「石を蹴る」、高橋順子「海の目」、小池昌代「高度」「流星」、杉山平一「暁闇」、和合亮一「青い空に」をあげて解説しました。
講演の後、朗読グループ・ガイアによる山梨の物故詩人の山梨がテーマの詩作品の朗読、アトラクションは珠さんによるスチールパンの演奏で華やかなうちに終わりました。
懇親会の司会は山梨県詩人会の秋山一彦&小沢啓子。開会の言葉は橘田活子山梨県詩人会副会長、挨拶は秋亜綺羅理事長、乾杯は麻生直子ゼミ担当理事。歓迎の言葉はまきののぶ山梨県詩人会監事。県外参加者全員からスピーチをいただき、ハーモニカ演奏を披露して下さった坂本登美さん、遠くは福山市の吉田隶平さん、山梨とのご縁が深い岡島弘子さんや植木肖太郎さん、お隣り静岡の皆さん…ありがとうございました。アトラクション・岩崎けんいちミニライブで盛り上がりました。
翌日の観光は宮光園(ワイン醸造発祥の地)・甘草屋敷(薬草栽培)・恵林寺(武田信玄公菩提寺)・笛吹川フルーツ公園(天空の絶景公園)巡りでした。
懇親会風景