詩投稿欄

2023年第7回HP現代詩投稿欄「新人賞」「新人」発表

2023年第7回HP現代詩投稿欄「新人賞」「新人」発表
  「新人賞」岩佐 聡
  「新 人」河上 類  守屋秋冬  竹井紫乙

 日本現代詩人会ホームページ現代詩投稿欄の第7回年間「新人賞」「新人」が2023年3月18日、早稲田奉仕園で開催された選考委員会で決定しました。選考委員は草間小鳥子、塚本敏雄、山田隆昭(選考委員長)の各氏。投稿作品は第24期(2022年1~3月)425篇、第25期(4~6月)444篇、第26期(7~9月)323篇、第27期(10~12月)425篇、計1616篇であり、延べ投稿者数は、906人で、各期の入選、佳作を選び、HPで発表してきました。その入選者を対象に年間の賞を選出しました。以下に各受賞者の経歴と言葉をご紹介します。(山田隆昭)

【新人賞・岩佐 聡(いわさ・さとし)】

岩佐 聡氏

1984年4月28日生まれ 福島県相馬市在住。
 ほぼ裸になりSMごっこが始まったりする行き付けのスナックの常連はいくつになってもおバカです。カウンターの奥から順々にギャッと声を響かせる。蝋燭を斜めにし、熱した蝋を身体に滴らせる遊び。私の順で不幸にも、蝋燭を傾けたのは、手馴れぬ青年で案の定私は、前腕の皮膚を火傷しました。この遊びの肝は蝋燭と皮膚との距離なのです。距離が短いと先の通り危険であり、しっかり開くと冷めながら蝋が滴り落ち、勢いのよい垂れ方をも観衆に見せることができる。ふと言葉も同じではないかと思いました。詩の美しさは、言葉と言葉の間の絶妙な距離によって規定されるのではないか。私はこの言葉同士の距離を測る実験を数年繰り返しており、作品はその途中経過です。一生誰にも評価されずに死んでいくかもしれないと恐怖もありましたが、このような光栄な賞を頂き、選考委員はじめ運営の方々に厚く御礼申し上げます。今後も言葉の実験を過激に行っていきたいと思っております。
【新人・河上 類(かわかみ・るい)】
東京都在住。
 詩を書き始めたときは、私がそこで立ちどまり、拾い上げざるを得なかった言葉の連なりに、他の人も同じように足をとめてくれるかということに、少なくない不安を感じていたように思います。いま、私の詩を読んでくださる方が一人でもいるという事実に、感謝していますし、勇気づけられています。
【新人・守屋秋冬(もりや・あきふゆ)】

守屋秋冬氏

1970年10月5日生まれ。日野市在住。
 五十歳を過ぎてから詩を書き始めました。毎月一篇ずつ投稿することが楽しくて、時々、佳作や入選作に名前が載ると嬉しくて、今日まで書き続けることができました。私は自身が使い慣れた言葉で、誰が読んでも分かるような詩を書きたいと思っています。今はとにかく腕を太くして、いつか自分の詩を作り上げたいです。この度は「新人」選出ありがとうございました。
【竹井紫乙(たけい・しおと)】

竹井紫乙氏

1970年生まれ。大阪在住。
 長い間、詩を読むことを忘れていました。コロナ禍がきっかけとなり、詩を読む楽しさを思い出し、書くことの面白さに出会えたことは不幸中の幸いです。
 投稿詩を読んでくださった選者の皆様方に感謝申し上げます。

●選考経過報告
 山田隆昭(選考委員長)

山田隆昭氏

 2023年のHP投稿欄の年間新人賞及び新人の選考は、2023年3月18日(土)午後5時より、早稲田奉仕園において、久しぶりに対面で行いました。選考委員は、草間小鳥子氏、塚本敏雄氏、山田隆昭の三名であり、互選により選考委員長を山田とすることを決めました。立会は佐川亜紀理事長、秋亜綺羅HP担当理事及び光冨幾耶同委員。
 まず、この賞は作品を対象にではなく、作者に与えられること、作品の評価に加え、将来性も考慮することを確認し、事前に配布されていた、光冨HP委員作成の各期入選作一覧を参考に、話し合いで選考を進めました。
まず、三人から新人賞及び新人として推薦する対象を五人以内で挙げました。そこで挙がったのは、南久子、守屋秋冬、河上類、岩佐聡、竹井紫乙、山川幸子、遠野一彦氏たちでした。
 この中から新人賞にふさわしい詩人を選ぶこととしたところ、岩佐、河上、守屋、南の四氏があがり、ひとり一人について検討しました。この中で質の高い作品をコンスタントに寄せた岩佐聡さんを新人賞としました。
 岩佐さんは、他者との関係に違和を感じながら、そこに寄り添ってゆこうとする想いを、的確な喩を駆使して表現しようとしています。ほとんど散文詩ですが行分けなども試みています。どのような形式を採っても視点がぶれません。そのことからも将来性が買われました。
 次に、残る六氏と、ほかに追加する候補がないかを含め、新人を検討しました。その中から、河上類、守屋秋冬、竹井紫乙の三氏を新人としました。
河上類さんは、入選回数が最も多く、安定した作品を見せてくれていました。イメージを次々に繰り出す方法と、心理の深層に分け入るような詩は魅力的でした。ただ、少し理屈が勝っているようにも思えました。守屋秋冬さんは、歳を重ねるなか、記憶の底に眠っている物・事を掬い上げ、物語性の色濃い詩を情感豊かに紡いでゆきます。地味ですが、心情が読む者に沁み込んできます。竹井紫乙さんは、日常に立脚し、そこにあるわずかな隙間から詩を引き出しています。テーマによって、軽やかに、またある時はしっとりと重く、自在に書き分け、詩に膨らみと柔らかさを与えています。南久子さんは既にベテランですが、自分の殻を破ろうとする姿勢は見習いたいものです。
 今回、わずかの差で入選を逃した人たち。もっと読みたいと思っていたところ、残念ながら投稿が途切れてしまった人。そうした人々の詩が、28期以降もHPに届けられ評価されて、必ず読めるであろうことを楽しみにしています。

草間小鳥子氏

塚本敏雄氏

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