2019年度現代詩人会新人投稿作品選考経過について
2019年度新人投稿作品選考会は横浜・桜木町クレストにて6月30日(日)午前10時より光冨郁埜担当理事、塚本敏雄理事(会計)立ち会いのもとで選考委員、金井雄二・中島悦子(互選により選考委員長は金井)の二氏により検討された。 その結果 新人賞1名・新人2名が以下のように決定した。
新人賞 宮永蕗(みやなが・ふき)(女)四十代
新人 清見苳子(きよみ・とうこ)(女)四十代
新人 鎌田尚美(かまた・なおみ)(女)五十代
今回の選考委員は二名だけということもあって、お互いの意見を尊重しつつ、結果を見極めるということになった。選考委員長は金井が担当することになった。最初に、この投稿欄全体の感想を述べあった。中島、金井両委員の共通の印象として、年齢を問わず、自由に投稿していただいたことはよかったが、推敲が足りないと感じられる作品も多少見受けられた。しかし、ネットを通じたことにより、気軽に投稿出来て、応募数も多く、詩を書く年代が多岐にわたっていたこと、また、若い人達が積極的に詩を書く姿勢を見せてくれたことは、明るいきざしであった。
三か月ごとの投稿を見ると、まず4月から6月選考では、清見苳子さんを金井が入選、中島が佳作に選んだ。しっかりと書かれた、技術的にうまい作品であるということで、目にとまった。ただ、毎月、読むにつれて、そのうまさだけでは物足りなくなってきたのも事実だった。
二回目の7月から9月の選考では、中島は、結城涼さんを入選としたが、次回からの投稿が続かなかった。一年間を通じて投稿することがその作者や作品を理解するのには必要である。金井は鎌田尚美さんがおもしろかった。鎌田さんには自由な発想があり、詩を構成していく力もあった。
三回目の10月から12月の選考では中島が宮永蕗さん「異郷へ」を入選にした。語り口に安定感があり、情景描写に優れていた。金井が佳作にも選び、宮永さんはこの一年を通じて、詩が飛躍的に伸びた感じがした。
四回目の1月から3月では、中島が鎌田さん、金井が宮永さんを選んだ。鎌田さんの「銀歯」という作品は、斬新な書きぶりで意表を突かれた感じがした。一方、宮永さんは、ここまでの詩作品を通して勉強し、着実に実力を伸ばしてきた感があった。
この四回の選考を通して、宮永さん、鎌田さんがそれぞれ入選二回となっている。そこで、この二人のどちらかが新人賞にふさわしいとした。新人賞では、詩は技術だけで書かれるものでもないが、ある程度のものは要求されるということと、今後、詩を書き続けていき、日本の詩の開拓をしていく可能性のある人を選びたいと考えた。
鎌田さんは独自な発想と構成力、読ませる力がある。一方、宮永さんは、佳作にも常時選ばれていたことも評価し、その詩的センス、そして、飛躍的な成長があったということで、今後がさらに期待できるという判断から、新人賞は宮永蕗さんに決定した。また新人には、実力十分の、清見苳子さん、鎌田尚美さんを選ぶことにした。その他、三度佳作に選ばれた大石瑶子さんも新鮮な力があると評価できたが、次期に期待し、書き続けていただきたい。(文責・金井)