2024年第8回HP現代詩投稿欄「新人賞」「新人」発表
【新人賞】末野 葉
【新人】 nostalghia
【新人】 た い ち
【新人】 田中 綾乃
末野 葉(すえの・よう)
1989年生まれ。東京都在住。
投稿規定にある「詩の上達を目指す」の文言に導かれ、初めて詩の投稿を始めました。毎期、入選作を読み、その選評を読み、佳作の選評を読んで作品を想像することは私にとって素晴らしい学びの場でした。選者の先生方、ありがとうございました。新人賞を賜り大変光栄に思います。
nostalghia(のすたるじあ)
1991年4月2日生まれ。静岡県沼津市出身、東京都府中市在住。
詩をつくることは、ひとつの姿勢なのかもしれないと最近よく思います。私はあまりにも弱く、いつも誰かに支えてもらってようやく姿勢を保てています。一年間投稿を続けてこられたのは、多くのひとが、私の詩の姿勢を正しつづけてくれたおかげだと思います。
このたびは新人に選んでいただき誠にありがとうございました。そして、投稿欄という貴重な場を設けてくださった日本現代詩人会の皆様にも深く感謝申し上げます。
た い ち
1987年生まれ。福井県出身、東京都在住。
日々出逢うたくさんの事象の、奥深い所にあるものを、この身体で感じとって、詩の言葉にしてみたいと思っています。今回、選者の先生方に頂いた選評は、私が無意識に志向していたものに光を当て、気づかせて頂けたのだと感じています。今回、たくさんの方に読んで頂ける機会を下さり、ありがとうございました。
田中綾乃(たなか・あやの)
一年間、いつも心のこもった選評をいただき、大きな励みになっていました。私自身の見えていなかった私が見つかり、詩を奥深く読む術を知るきっかけとなった、極めて尊い経験でした。
選者の先生方、運営の皆様に心より感謝申し上げます。
2024年日本現代詩人会第8回HP詩投稿欄新人賞、新人選考経過報告
渡辺めぐみ(選考委員長)
2024年日本現代詩人会第8回HP詩投稿欄新人賞及び新人の選考会は、早稲田奉仕園セミナーハウスにて、2024年3月10日(日)午後3時より6時まで、塚本敏雄理事長、秋亜綺羅HP担当理事及びズームでの参加の光冨幾耶HP委員の立ち会いのもとで開催されました。選考委員は北原千代氏(ズームでの参加)、根本正午氏及び渡辺めぐみ。互選により渡辺が選考委員長を務めさせていただきました。
初めに司会として1年間の選考の所感を述べ、選考方法について提案を行いました。所感としては、3名の委員の選考感覚、詩観に他の年度よりも隔たりがあり、選ばれた入選作、佳作に重複が少なかったこと、渡辺の選んだ作品に関しては1回のみ入選や佳作に選んだ作品にも深く惹かれ高く評価できる作品が非常に多く存在したことなどです。しかし、投稿欄新人賞及び新人が作品ではなく作者に与えられる賞であることから、1年間毎期一生懸命投稿してくださった投稿者の皆様のお気持ちを考え、基本的には入選回数の多い方にさしあげるべきではないかということ、また新人賞と新人を別々に選考するのではなく、新人賞の選考対象者の中から新人を選出すべきではないかということを提案し、北原委員と根本委員の同意を得ました。そこで、光冨HP委員作成の入選者の入選回数を記した資料などに基づき、各々の委員が推したい詩人についてその推薦理由を述べ、委員全員で具体的な作品について検討しました。
新人賞及び新人の選考対象となった方々は、入選回数の多い順に述べると石川順一(4回)、末野葉(4回)、nostalghia(3回)、芦川和樹(2回)、柿沼オへロ(2回)、吉岡幸一(2回)、高橋克知(2回)、田中綾乃(2回)、渡邊荘介(2回)の各氏、入選回数は1回であっても、新人としたたいち氏、散文的な詩ながら将来性を考慮した南田偵一氏、鋭い切り口と卓抜な発想を持つ阿呆(あほ)木種(でくさ)氏です。渡辺は芦川和樹氏と吉岡幸一氏を高く評価していましたが、優れた語彙力と生命感を合わせ持ち意味に回収されない独特のスタイルのリズム感のある詩を書く芦川氏は、投稿途中で現代詩手帖賞を受賞されたため、過去の選考会の例に倣い新人賞の選考対象からはずすことで全委員の意見が一致しました。また吉岡氏は小説と詩の境界域で生きる意味を教訓的かつアイロニカルに問いかける寓意的な物語詩を紡ぐ詩人であり、その作風の特異性から新人の推薦を考えましたが、他の2名の委員から既に他の複数の受賞や入選歴を有し作風も安定しており新人の域を超えているのではないかとの指摘があったため、新人に選ぶことを断念しました。お二人には新詩集で詩集賞を目指していただきたく思います。
末野葉氏、nostalghia氏の作品は、渡辺が各期の選考において評価しつつも入選や佳作に選ばなかった多数の作品群に含まれていたので、本選考会では他の2名の委員が推す候補群の中からこれらの2名を推しました。このどちらを新人賞にするかについて協議し、他の2名の委員の推した末野氏を新人賞に、渡辺の推したnostalghia氏を新人に決定しました。ナイーヴな感性が反映している末野氏の作品には、自己と自己を取り巻く身近な世界を凝視する姿勢の誠実さにインパクトがあり、詩語の構築力とテンションを徐々に高めてゆく展開感で魅了するnostalghia氏の作品には、利他的かつ肯定的価値観が内包されています。お二人の自らの思想を力強く訴えかける筆力に拍手。また、簡潔な詩語の運びに身体感覚とポエジーが光るたいち氏、及び理念による詩行ではあるものの、虚無的な現代詩が多い時代にあって社会の不条理に真向かい敬虔な祈りを孕む田中綾乃氏を、全委員一致して新人としました。
おめでとうございます。