「子どもの詩」に関することに取り組んでいらっしゃる個人や団体、イベントなどをご紹介していくコーナーです。(中島悦子)

安西均献詩事業と子どもの詩   

 一九八一年に日本現代詩人会会長を務め、第七回現代詩人賞受賞詩集「チェーホフの猟銃」等で著名な安西均は、福岡県筑紫野市で生まれました。万葉集の時代、九州の広域を指していた筑紫の国の呼び名の発祥の地です。安西均は幼少の頃から郷土史や万葉集に興味を持っていました。
 詩人として活躍するようになると、詩集や著書、新聞等のエッセーのな かでも郷土の歴史や風土をしばしば取り上げ、筑紫人の詩人とも言われていました。今日の筑紫は都市圏として人口増が著しく、安西均の少年時代の風景はありません。当然住民の郷土に対する認識も変わり、
子ども達を取り巻く環境の変化も著しいものがあります。地域の住民も学校の先生も、安西均の名を知る人はほとんどいませんでした。
 こういう中で地域づくりを目的とした筑紫区のボランティアで構成されているコミュニティ運営協議会は、平成三十年に安西均生誕100年を記念し「安西均献詩事業」を企画しました。
 筑紫野市の住民を対象に現代詩の応募を行い、詩集を発行するもので、初年度小中高生を中心に2000篇余の作品が集まりました。平成五年には3000点を超えるに至っています。応募作品は福岡県詩人会(代表幹事田島安江)の有志で選考を行い、当協議会のメンバーが詩集を編集します。その上で保護者参観のなか安西均の詩の朗読などを交えて表彰式を行っています。市長や教育長の来賓もあり、今では地域の行事として定着しております。
 これらの応募作品の大半は各学校の支援により集まっていますが、都市化のかでも子どもたちは機会が与えられると感性豊かな作品を書いてくれます。大人たちあるいは今日の社会が子どもたちの成長に伴い感性を摘み取っているような気がしてなりません。              
                                  (文責 福岡県詩人会 田中圭介)



    

    安西均顕彰詩集 第6号            安西均生誕100周年記念式典




小学校の部 特選
 

11本のろうそく         
        筑紫小学校 五年 島村美音 

ケーキのろうそくふーっと消すと 
辺りはまっくら・ ・ ・ ・ 
まっくらで何も見えない 
でもなにかが動いてみえる                 
ろうそくがケーキを食べている! 
私のケーキはろうそくのおなかの中 
でもろうそくはおいしくてよろこんでいる 
笑っていておもしろい
みんなでハハハ   


                                    令和5年度表彰式                       

小学生の部 一席 

勝負の時        
        阿志岐小学校 六年 鶴岡幸征
 


なすび
 
おでん 
たまごやき 
ぼくの勝負の時がきた 
最初の敵なすびは水でのみこむ 
よし勝った 
次の敵おでんは集団でおそいかかってくる 
ちくわふき矢 
こんにゃくムチ 
みごとにかわす 
よし勝った 
最後のボスがやってきた 
においで鼻をやられた 
どうしようピンチだ 
今こそ必殺技だ 
「鼻つまみしょう油たいりょうかけ!」 
よし勝った 



中学生の部 特選 

同じ夢を見る         
        筑紫野南中学校 一年 池部結夢
 


誰かにとって小さな箱庭でしかない世界
その中でも小さな小さな場所で 夢を見る 
まだ会ったことのない景色を、人を、世界を、 
 見てみたいから。 
今は知らない誰かが「未来の友達」って良いなあ。 

同じ本を読んで、同じ曲をきいている。 
それは顔も名前も知らない世界をつなげるバイブル。 
人々を照らす月や太陽に星々。 
別れと出会いに嘆き、喜ぶ。 
出会いがあればいつか別れもくるけれど、私は世界を 
 見てみたい。 
今は知らない誰かと、同じ夢を見てみたい。 

 

中学生の部 一席 

淡い 
        天拝中学校 三年 矢野紗也佳


溢れ出す感情はとどめなく流れ、止まることを知らない。 
蛇口をひねるようにしても、扉を閉めるようにしても、 
 電源を落とすようにしても、どこかに穴が空いているか 
 のように。
少しでも触れると、溶けてしまいそうなくらい淡い感情、 
 それなのに溢れ出すことしか知らないような感情。
言葉を言えるはずのない淡い感情なのに、どうして 
 自分の想いが聞こえるのか。 
誰かに聞いて欲しくて、でも誰にも聞かれたくない、 
 そんな私の淡い想いが。 
まるで、泣きじゃくるように溢れ出す感情に貧しい 
 想像力の中でしか生きることのできないような 
 未来の自分を感じてしまう。
そんな淡い感情に、ひとりでに涙が溢れ、私は今日も、 
 蓋をする。 

 

高校・一般の部 特選 

おとなになる         
        筑紫高等学校 二年 山村彩咲 


不安いっぱいのわたしの心をそっと撫でた桜は
 
 風に誘われて散ってしまった。 
陽に射されるわたしにいつも寄り添ってくれていた 
 影法師も気づけばいなかった。
わたしを何かから守ってくれていた色とりどりの 
 紅葉の壁も枯れ落ちてしまった。
裏切りを知らないまっすぐに白い雪もすぐに 
 
わたしを置いていってしまった。 
独りを見守る月と星さえも朝になればわたしの  
 知らないどこかへいってしまう。 

ふと顔をあげると桜の花びらが頬に落ちた。 
みんな変わらずここにいた。 
進んでいたのは、変わってしまっていたのは 
 わたしの方だった。 
でも大丈夫。 
気づけたなら、忘れていないなら、

 

高校・一般の部 一席 

僕のびん
         筑紫高等学校 一年 中島鈴夏 


僕の心の中のびん

空っぽだった僕のびん 
君が最初にくれたもの 
明るい笑顔 
楽しい時間 
空っぽだった僕のびん 
幸せ少し溜まったよ 

僕の心のなかのびん 
少し溜った僕のびん 
君が次にくれたもの 
真っ赤な炎 
ピンクのハート 
少し溜った僕のびん

またまた幸せ溜ったよ
      
   安西均生誕100周年記念式典   

 


                      






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