この会は日本の詩人の権益を団体的に守り、現代詩の普及発展のために協力し、国際的活動を推進し、詩人相互の親睦をはかることを目的としています。
八木幹夫会長
公益信託代表
以倉紘平
第73回H氏賞
小野絵里華
第41回現代詩人賞
河津聖恵
投稿数575作、投稿者309人。多くの方にご投稿いただきありがとうございました。詩投稿第29期(4-6月)の選評および入選作をご紹介いたします。
またトップページに入選作を何回かに分けて、縦書き表示にて順次公開していきます。
- 【わたしたちはロシア・プーチン大統領に起因する不条理に反対し、ウクライナの人々の安全と平和を 強く望んでいます。──日本現代詩人会HP運営委員会】
- 6月4日(日)に「日本の詩祭2023」を開催しました。たくさんのご来場ありがとうございました。
- 【告知】「いしかわ百万石文化祭2023・詩(うた)の祭典」作品を募集。詳しくはこちら。
- 【子どもへの詩の普及】「アウトリーチ活動としての詩のワークショップ、その光輝」
田中庸介(2023/06.25) - HP現代詩投稿欄 第28期選考結果・選評を発表しました。
- 【日本現代詩人会全会員名一覧】
◆第73回H氏賞
受賞詩集 『エリカについて』(左右社)
受賞者 小野絵里華
受賞者プロフィール
1984年 東京都生
東京大学大学院総合文化研究科 博士課程修了
2010年 ユリイカの新人としてデビュー
2022年 エルスール新人賞を受賞。
主な著書『エリカについて』(左右社2022年)
『1Q84スタディーズ』(共著 若草書房2010年)
◆第41回現代詩人賞
受賞詩集 『綵歌』(ふらんす堂)
受賞者 河津聖恵
受賞者プロフィール
1961年東京都生まれ、京都在住。
京都大学文学部独文学科卒業。
『夏の終わり』(第9回歴程新鋭賞)、『アリア、この夜の裸体のために』 (第53回H氏賞)、
詩論集『ルリアンスー他者と共にある詩』 『「毒虫」詩論序説―声と声なき声のはざまで』(第21回日本詩人 クラブ詩界賞)
◆授賞式 2023年6月4日(日) 「日本の詩祭2023」
(私学会館アルカディア市ヶ谷にて)
【第73回H氏賞候補詩集決定】
二〇二三年二月四日(土)早稲田奉仕園で開票理事会を実施し、その後、第1次選考委員会において、次の通り第73回H氏賞候補詩集が決定しました。
1桑田今日子『ヘビと隊長』(詩遊社)10票
2北島理恵子『分水』(版木舎)9票
2小篠真琴『へいたんな丘に立ち』(文化企画アオサギ)9票
4鹿又夏実『点のないハハ』(書肆侃侃房)8票
4望月遊馬『燃える庭、こわばる川』(思潮社)8票
6篠崎フクシ『二月のトレランス』(土曜美術社出版販売)7票
6竹中優子『冬が終わるとき』(思潮社)7票
8鎌田尚美『持ち重り』(思潮社)6票
〈選考委員会推薦候補詩集〉
小野絵里華『エリカについて』(左右社)
中尾一郎『猫町diary』(土曜美術社出版販売)
夏野雨『じゃんけんをしながら渡る歩道橋がいちばん好きだ』(私家版)
以上、全十一冊が候補詩集に決定。
〈次点〉
草野理恵子『有毒植物詩図鑑』5票
佐野亜利亜『子犬は跳ねて空の色に溶けた』5票
中尾一郎『猫町diary』5票
本間雪衣『命名』5票
花潜 幸『初めあなたはわたしの先に立ち』5票
【第73回H氏賞選考委員】(*は理事)
◎広瀬大志(選考委員長)、坂多瑩子、
清野裕子、照井良平、*中田紀子、
山本純子、若宮明彦
※投票総数301 有効票237
白票55 無効票9
【投票管理委員】田井淑江 森雪拾
◆第2次選考委員会 受賞詩集決定
二〇二三年三月四日(土)
午後一時から五時(予定)
早稲田奉仕園セミナーハウス
二〇二三年二月四日(土)早稲田奉仕園で開票理事会を実施し、その後、第1次選考委員会において、次の通り第41回現代詩人賞候補詩集が決定しました。
1北畑光男『背の川』(思潮社)23票
2岡隆夫『アレクサンドロス王とイチジク』(砂子屋書房)17票
2瀬崎祐『水分れ、そして水隠れ』(思潮社)17票
4江口節『水差しの水』(編集工房ノア)11票
5石毛拓郎『ガリバーの牛に』(紫陽社)8票
5佐相憲一『サスペンス』(文化企画アオサギ)8票
7相沢正一郎『テーブルのあしを洗っている葡萄酒色の海が……』(砂子屋書房)7票
7河津聖恵『綵歌』(ふらんす堂)7票
7齋藤恵美子『雪塚』(思潮社)7票
7中谷順子『缶蹴り』(土曜美術社出版販売)7票
〈選考委員会推薦〉
大橋政人『反マトリョーシカ宣言』(思潮社)
八重洋一郎『転変・全方位クライシス』(コールサック社)
以上、全十二冊が候補詩集に決定。
(※山田兼士『冥府の朝』(澪標)7票。山田兼士氏は二〇二二年十二月六日にご逝去され、候補詩集から除かせて頂きます。詳細は付記)
〈次点〉
大橋政人『反マトリョーシカ宣言』6票
安藤元雄『惠以子抄』6票
中原道夫『空』6票
山本博道『夜のバザール』6票
【第41回現代詩人賞選考委員】(*理事)
◎朝倉宏哉(選考委員長)、伊藤悠子、
斎藤恵子、高貝弘也、*中井ひさ子、
橋浦洋志、龍 秀美
【投票管理委員】
田井淑江、森 雪拾
投票総数301票 白票25票 無効票7票
有効票269票
◆第2次選考委員会
二〇二三年三月四日(土)
午後一時~五時(予定)受賞詩集の決定
早稲田奉仕園セミナーハウス
【付記】山田兼士氏は、二〇二二年十二月六日にご逝去され、開票理事会の時点で物故が確認されました。候補詩集になった場合、ご本人の受諾署名などの手続きができませんため、開票結果の記録にとどめ、候補詩集から外させて頂くことを理事会で承認し、第一次選考委員会でも合意されました。
日本の詩祭2023・第Ⅰ部・贈呈式・顕彰・詩朗読
「詩投稿 第29期」入選作品紹介Topページに入選作を順次公開します。
佐為末利「できもの」
鏡の前に立ち
唇を突き出す
コンプレックスを打ち明けるときほど
子供じみたものはない
だから言わない、誰にも
下唇のうらっかわに
ぽっかりと口を開いた闇がある
「ニキビだったらよかったのにな」
僕は嫌味を言ってみる
もっとわかりやすく
見せつけるかのように
肌が荒れてしまえば
よかったのに、な——
やり場のない感情は
本当にやり場がないらしい
一人で胃を痛めたって仕様がないから
だから僕は口の中に
もう一つの口を作ったんだ
あの笑顔、あの声
みんなが自分の友達だとおもってる
勘違いも甚だしいと僕はおもった
堂々とみんなの前で泣いたりする
天使の格好をした悪魔
本当にかわいい
肌が白くて
女の子みたい
全然否定しないもの
褒められ慣れてるんだわ
「〇〇くんは、
あたしとは違うから」
——と言って
グラウンドの白線の向こう側に、僕を追いやった
劣等感を
やすやすと人に差し出してしまうだなんて
僕は、あの子を醜いと思った
口の中で吐く
(劣等感で、下手に出んなよ)
やだ、怖い
どうしたの
そんな怒んないでよ
手のひらを返し
腫れ物に触れるかのような態度に変わった
眉間のあたりで疼くニキビが彼女自身の主張をやめない
「怖いのは、腫れ物は、お前そのものだ」
ねえ、きみ
隠された傷は、ずっと残るって知っていたかい?
治らないんだ、傷が
もう一人の僕が
きみを嫌悪することをやめないんだ
メンデルソン三保「白いケープ」
私は北へ向かう急行列車に乗っている
開かない窓の外で森の針葉樹が
置いてけぼりが不安なのか
急ぎ足で私の後ろに流れていく
人も動物も鳥もなく樹の緑と空の青だけ
次の駅で制服らしいコートを着た
高校生くらいの女の子が駆け込んできた
向かい側の席に着くと手提げバッグから
編みかけの白い毛糸を出して一心に
赤ん坊のケープのようなものを編んでいる
誰の赤ん坊のためだろうか
カチカチカチ 棒針がぶつかり合う音がする
私は母親に会ったことがない
向かっているのは母親が生まれて死んだ街
最近まで「実の」母親がいることすら
知らなかった その街で
母親の残香を味わってみる
カチカチカチ カチカチカチ
わたしは眠ってしまった
何か物音がして 目を開けた
向かいの席の女の子が赤ん坊を抱いている
白い毛糸のケープに包まった赤ん坊は
クウクウと笑っている
柔らかい髪の毛が静電気のせいか
まっすぐに立っていた
この赤ん坊はどこから来たんだろう
このケープはさっきまで女の子が
編んでいたものなのか
私は赤ん坊と白いケープを見つめた
ピンクの毛糸の編み込みが隅の方にある
「さ く ら こ」とひらがなが読めた
「私もさくらこ…」と言いかけて
私は言葉を止めた
女の子は私を見てうなづいた
私は瞬きを止めた
私は 私の母親と赤ん坊の私と
旅をしていたのであった
列車は終点の駅に入っている
急いで棚の上の荷物を下ろして振り向くと
女の子も赤ん坊も消えていた
「さくらこ」と名前の入った
白いケープだけが
座席の上にあった

- 2023/9/16
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