この会は日本の詩人の権益を団体的に守り、現代詩の普及発展のために協力し、国際的活動を推進し、詩人相互の親睦をはかることを目的としています。
郷原宏会長
公益信託代表
以倉紘平
第73回H氏賞
小野絵里華
第41回現代詩人賞
河津聖恵
投稿数480作、投稿者288人。多くの方にご投稿いただきありがとうございました。詩投稿第30期(7-9月)の選評および入選作をご紹介いたします。
またトップページに入選作を何回かに分けて、縦書き表示にて順次公開していきます。
- 【わたしたちはロシア・プーチン大統領に起因する不条理に反対し、ウクライナの人々の安全と平和を 強く望んでいます。──日本現代詩人会HP運営委員会】
- 【速報】9月21日の第2回理事会において、新年度役員が下欄のように決定しました。
- 【国際交流】「詩の檻はない」──ソマイア・ラミシュさん支援について (2023/11.14)
- 【子どもへの詩の普及】「アウトリーチ活動としての詩のワークショップ、その光輝」
田中庸介(2023/06.25) - HP現代詩投稿欄 第28期選考結果・選評を発表しました。
- 【日本現代詩人会全会員名一覧】
《会 長》
郷原 宏
《理事長》
塚本 敏雄(名簿・HP委員)
《副理事長》
杉本真維子(詩祭・国際交流)
《理 事》
山田 隆昭(総務・慶弔)
秋 亜綺羅(総務・HP・IT)
野村喜和夫(総務・国際交流)
根本 正午(一般会計・HP・IT)
青木由弥子(年会費)
松尾真由美(詩祭・冊子)
中島 悦子(子ども・詩祭・冊子)
渡辺めぐみ(詩集賞・入会)
浜田 優(会報・名簿・入会)
広瀬 大志(入会・ゼミナール)
春木 節子(ゼミナール・入会)
沢村 俊輔(名簿・記録・入会)
《監 事》
宮田 直哉
鹿又 夏実
《HP運営委員》
光冨 幾耶
《詩集賞・公益信託代表》
以倉 紘平
◆第73回H氏賞
受賞詩集 『エリカについて』(左右社)
受賞者 小野絵里華
受賞者プロフィール
1984年 東京都生
東京大学大学院総合文化研究科 博士課程修了
2010年 ユリイカの新人としてデビュー
2022年 エルスール新人賞を受賞。
主な著書『エリカについて』(左右社2022年)
『1Q84スタディーズ』(共著 若草書房2010年)
◆第41回現代詩人賞
受賞詩集 『綵歌』(ふらんす堂)
受賞者 河津聖恵
受賞者プロフィール
1961年東京都生まれ、京都在住。
京都大学文学部独文学科卒業。
『夏の終わり』(第9回歴程新鋭賞)、『アリア、この夜の裸体のために』 (第53回H氏賞)、
詩論集『ルリアンスー他者と共にある詩』 『「毒虫」詩論序説―声と声なき声のはざまで』(第21回日本詩人 クラブ詩界賞)
◆授賞式 2023年6月4日(日) 「日本の詩祭2023」
(私学会館アルカディア市ヶ谷にて)
【第73回H氏賞候補詩集決定】
二〇二三年二月四日(土)早稲田奉仕園で開票理事会を実施し、その後、第1次選考委員会において、次の通り第73回H氏賞候補詩集が決定しました。
1桑田今日子『ヘビと隊長』(詩遊社)10票
2北島理恵子『分水』(版木舎)9票
2小篠真琴『へいたんな丘に立ち』(文化企画アオサギ)9票
4鹿又夏実『点のないハハ』(書肆侃侃房)8票
4望月遊馬『燃える庭、こわばる川』(思潮社)8票
6篠崎フクシ『二月のトレランス』(土曜美術社出版販売)7票
6竹中優子『冬が終わるとき』(思潮社)7票
8鎌田尚美『持ち重り』(思潮社)6票
〈選考委員会推薦候補詩集〉
小野絵里華『エリカについて』(左右社)
中尾一郎『猫町diary』(土曜美術社出版販売)
夏野雨『じゃんけんをしながら渡る歩道橋がいちばん好きだ』(私家版)
以上、全十一冊が候補詩集に決定。
〈次点〉
草野理恵子『有毒植物詩図鑑』5票
佐野亜利亜『子犬は跳ねて空の色に溶けた』5票
中尾一郎『猫町diary』5票
本間雪衣『命名』5票
花潜 幸『初めあなたはわたしの先に立ち』5票
【第73回H氏賞選考委員】(*は理事)
◎広瀬大志(選考委員長)、坂多瑩子、
清野裕子、照井良平、*中田紀子、
山本純子、若宮明彦
※投票総数301 有効票237
白票55 無効票9
【投票管理委員】田井淑江 森雪拾
◆第2次選考委員会 受賞詩集決定
二〇二三年三月四日(土)
午後一時から五時(予定)
早稲田奉仕園セミナーハウス
二〇二三年二月四日(土)早稲田奉仕園で開票理事会を実施し、その後、第1次選考委員会において、次の通り第41回現代詩人賞候補詩集が決定しました。
1北畑光男『背の川』(思潮社)23票
2岡隆夫『アレクサンドロス王とイチジク』(砂子屋書房)17票
2瀬崎祐『水分れ、そして水隠れ』(思潮社)17票
4江口節『水差しの水』(編集工房ノア)11票
5石毛拓郎『ガリバーの牛に』(紫陽社)8票
5佐相憲一『サスペンス』(文化企画アオサギ)8票
7相沢正一郎『テーブルのあしを洗っている葡萄酒色の海が……』(砂子屋書房)7票
7河津聖恵『綵歌』(ふらんす堂)7票
7齋藤恵美子『雪塚』(思潮社)7票
7中谷順子『缶蹴り』(土曜美術社出版販売)7票
〈選考委員会推薦〉
大橋政人『反マトリョーシカ宣言』(思潮社)
八重洋一郎『転変・全方位クライシス』(コールサック社)
以上、全十二冊が候補詩集に決定。
(※山田兼士『冥府の朝』(澪標)7票。山田兼士氏は二〇二二年十二月六日にご逝去され、候補詩集から除かせて頂きます。詳細は付記)
〈次点〉
大橋政人『反マトリョーシカ宣言』6票
安藤元雄『惠以子抄』6票
中原道夫『空』6票
山本博道『夜のバザール』6票
【第41回現代詩人賞選考委員】(*理事)
◎朝倉宏哉(選考委員長)、伊藤悠子、
斎藤恵子、高貝弘也、*中井ひさ子、
橋浦洋志、龍 秀美
【投票管理委員】
田井淑江、森 雪拾
投票総数301票 白票25票 無効票7票
有効票269票
◆第2次選考委員会
二〇二三年三月四日(土)
午後一時~五時(予定)受賞詩集の決定
早稲田奉仕園セミナーハウス
【付記】山田兼士氏は、二〇二二年十二月六日にご逝去され、開票理事会の時点で物故が確認されました。候補詩集になった場合、ご本人の受諾署名などの手続きができませんため、開票結果の記録にとどめ、候補詩集から外させて頂くことを理事会で承認し、第一次選考委員会でも合意されました。
日本の詩祭2023・第Ⅰ部・贈呈式・顕彰・詩朗読
「詩投稿 第30期」入選作品紹介Topページに入選作を順次公開します。
田中綾乃「虹」
あなたの手は森を撫でる風
その手にふれた時
もうひとりのかなしいわたしに
わたしのかなしさが
合わさって
光環を成した
地上のすべての恋人たちに
同じようにいくつもの
完全な日食があるように
ゆるさないのは
文字だけが 神と
信じる者たちだけ
ゆるさないのは
妻夫だけが 家と
信じる者たちだけ
古びた教会の屋根の下では
祝福されなかった愛を
四季はよろこび
野の向こうには祝祭がある
天は町に火など降らせず
灰色にほほえんでいる
こんな日々を愁いながら
やり過ごすのは終わりだ
と言って
手をのばしても掴めない
燃えるような色彩を
旗にして歩いた
まだ 口を閉ざされている
わたしたちがいる
まだ 武装の解けない
わたしたちがいる
重ねてきた掌と掌に
しまいこんだ祈り
虹は灯る
まっすぐな くずれやすい橋の袂に
昏い雨の跡を かくして
未来の味蕾「向日葵の晩餐会」
side A:.『召し上がれ』
≦≦≦
ひかりをたくさん呑みこむ向日葵は、太陽に手招きされていた。追いかけて、追いかけて、黄色いはなびらが回転する。陽射しに接触していった喉が熱い。どく、どく、揺れる夏の鼓動。静脈と動脈が描く地図、羅針盤、磁石に導かれて。向日葵畑に浮き沈みする麦わら帽子。ひろい海を航行する船のようだ。あたたかい温度を着地点に注射する。きいろいつぼみよ、両手を広げて、背伸びせよ。梅雨明け宣言。楽園を耕しにゆこう。廃墟であった日々を地下に埋めながら、肥料にして、陽気な季節が地上を取り囲みはじめる。魂の穴に太陽を詰めこんでゆけ。ひらいてゆくはなびらは、みずのかなしみを振り払おうとしている。梅雨のなごりの朝露を弾いて御覧。柔い肌が、瞼が、灼けそうだ。夏空を溶かした炭酸水をとくとく注ぐ。嗚呼、わたしのなかに浸水する。散り散りになったバスの路線図をかき集めて、皺を伸ばして、修復しながらバスの発車を待っている。
side B:『いただきます』
♯♯♯
♯空砲ひい、ふう、みい♯季節の文頭が急かされている♯早く、早く、発声して♯早く、早く、投影して♯鳥よ♯若草色の伝言を届けて頂戴♯雨上がりに視界が拓けてゆくように♯じわじわ汗ばんでく
るブラウス♯腕のしたに湖が湧く♯穴が開きそうなボートを漕ぎ出そう♯孔を確認するように♯湖にボートを浮かべる♯つめたさの残る指先♯暑い気温に溶けそうだ♯かなしみとたのしみで編んだ麦わら帽子が♯風にそよいでいる♯るらら♯あなたにリクエストしたスピッ⚫のうた♯流れてゆく歌声をなぞる♯迷子の野犬みたいな目をしたあなたを♯放っておくことができずに拾った♯亡くなった母犬の母乳を飲むように♯ミルクを啄んだ♯見失われた鳥のセピア色の写真を♯硝子の灰皿で燃やしてゆく♯薄氷を踏むようなふたりの暮らしからは♯どこからか水が漏れているかもしれない♯鳥の剥製で蓋をしてよ♯硝子玉の義眼の輝きと翳り具合は♯どこかあなたの眼の深さに似ている♯いくら手を伸ばしても触れられないものなの♯
sideC:『ご馳走さまでした』
≧≧≧
時間がどんどん経過していって、わたし、の重力だけが置き去りにされてゆく。自らをも脅かす毒を内包した球根が両足の行く手を阻んでいる。網のような地下の根を泳ぎ切れない。あなたは同じ空間にいても、違ったタイムラインを生きている。しずかな部屋に長針と短針が降り頻る。残響が球根に纏わりつく。砂漠のなみだを吸い上げた。長い間、忘れていた道程にちいさな向日葵がほころぶ。ひかりを蓄えた種よ、球根に負けるな。目にみえない闘いが地下で勃発している。芳しい香水のような匂いを放つはなびらのはばたき。飛んでゆけ、橙色の風船を破る銃声がまた聴こえた。実弾は入っていない。音のみのファンファーレ。うつくしい威嚇。煌めきがばさばさ、と飛び散る。バスの発車音が誕生日に響いて、躰の輪郭のみが凝固して出発した。車窓から、あなた、の方角にも、わたし、の方角にも、向日葵の花びらが咲き乱れて、さようならを告げていた。
*縦書き表示にしたため「≦」(以下)、「≧」(以上)の記号が横倒しになっています。
*表示スペースの制限で、改行位置は元原稿とは違っています。
nostalghia「この部屋を通り抜けていい」
ひとことで言おうか。
この部屋では、許されている。
悲しみながら、飢えるように、
人を集めて、泣いていい。
それは、とても、許されている。
私たちはそれを待っている。
ここを、この部屋を。
灯りを点けずに通り過ぎていい。
百の影として立ち尽くす
歴史のゴーストを
あなたと同じ色素のものとして
拒んでいい。
拒みながら、
あいさつを交わし
通り過ぎて行っていい。
次のドアを開けていい。
掘り返した土に含まれる、根っこの瑞々しい、
泥のにおい。に満ちた部屋もある。
土足で。雨に濡れて。
孤独に。家族がいたとしてもいずれ孤独になるから
笑いながら耐えて。お腹が空いたら、
私といっしょに。
配信された痛みを共有せずに、
むきだしの床に座って
あなたが座ると、みんなも座る。
三角座りだと、いい。おやま座りといっていい。
体育座り……あぐらをかいてもいい。
待っていて……あなたが
ひとことで伝えきれるようになるまで。あなたの
大切なものを忘れ切るまで、
それまでここにいていい。
だれも話を聞かないかもしれないけれど……
床は、冷たいけれど……お腹は空くけれど、
この部屋に人は集まる。
だから、飢えていい。飢えて……空っぽにすることで、
あなたが誰であったのか、この部屋を通り抜けて、
どこへ行こうとしていたのか。
渇きながら、伝えきっていい。

- 2023/12/2
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- 2023/11/16
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- 2023/11/1
- 「詩投稿欄 第30期」入選作品紹介Topページに入選作を順次公開します。
- 2023/11/1
- 日本現代詩人会 詩投稿作品 第30期(2023年7月―9月)入選作・佳作・選評発表!!
- 2023/10/31
- 日本現代詩人会 詩投稿作品 第30期(2023年7月―9月)入選作・佳作発表!!
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